【勉強会レポート】自然は人間とつながっている?森林生態学から考える「植林」の必要性とは?
こんにちは。一般社団法人SOCIALTEMPLEの嶋田と申します。
現在、一般社団法人SOCIALTEMPLEでは、いくつか新たな事業の立ち上げが進んでいます。
「植林」も、その1つ。
先日、2024年7月15日に、国際生態学センターの目黒先生をお招きして、森林の現状とその重要性についてお話を伺いました。
本勉強会レポートでは、その内容を要約し、目黒先生が強調されたポイントをお伝えするのですが、その勉強会に至るまでの経緯として、SOCIALTEMPLEがチャレンジする「植林」とはどのようなものか、をお伝えします。
「植樹」ではない、「本来の森づくり」
我々がチャレンジしたいことは、「木を植える」ではなく「山梨県を守る森を創る」ことだと考えています。
その考えは、我々だけで思いついたのではなく、とある先生をお招きしてお話を聞いて、その考えに共感し、必要性を強く感じたことによります。
その先生とは、国際生態学センターの目黒先生です。
実は、2023年1月頃、この事業のアイデアが生まれて、育て始めたころに「まずは、植林を実際にやっているところに行ってみよう」ということで、見に行ったのが、十三代目市川團十郎さん(始めた当初は市川海老蔵)が広告塔となって活動している「ABMORI」でした。
そしてその現場で見かけた「本来の自然に近い森を創る」手法を提唱して植林を行っていたのが目黒先生でした。
当時、その目黒先生に話しかけたところから進展して、「まずは植林の勉強を、団体内でしてみよう」というところから、今回の勉強会開催に至りました。
目黒先生が目の当たりにしてきた「植生の劣化」
今回はお招きした国際生態学センターの目黒先生は、世界中の「本来の自然の力を持つ」森林づくりに携わっています(なので、あくまで植樹ではなく、植林なのです)。
世界中の森を見る中で、森林の減少に限らず、本来植わっているはずの樹木ではないものが植わっていることで、地域の自然植生が劣化している現状を目の当たりにしてきたそうです。
森林の質にこだわる重要性
では、地域の自然植生が劣化しているとどうなるか?
劣化した植生の森林では、本来の森林のパワーを出すことができません。
森林のパワー、というとなんかスピリチュアルにきこえるのですが、そうではありません。
環境の緩衝機能(防音防火、地盤保持、水分保持、水質浄化)や生物多様性の保全には、自然性が高い植生、あえて言葉を言い換えるなら「森林のパワーがしっかりある」素地が必要ということになるのです。
日本は、国土の3分の2が森林(※)だそうですが、その多くは伐採後、人が木を植えた人工林で、多くが杉や松なのだそうです。
(※)参考文献:https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary07
例えば、直近の能登半島大地震でがけ崩れをした場所の植生は、本来の植生ではなく人工的に植えなおされた人工林である場所が多く、森林の機能である地盤保持機能が弱っていることが原因の一つとして考えられるそうです。
言い換えれば、人間が勝手に伐採して開発した土地を、とりあえず「森に戻しておこう」程度のつもりでともかく樹木を植えていったことによって、いうなれば「弱い自然」を作ってしまったがために、災害の激甚化・被害拡大を招いている、というわけです。
仏教用語の「因果」そのもののようなお話ですね。。。
宮脇方式の植林
そのような因果をどう変えていくか。
本来の自然に戻す、という意味で、その土地に適切な環境を作ることができる樹木を植えていく必要がある、とのことでした。
目黒先生は、師匠である宮脇先生が開発した「宮脇方式」という植林手法で森林を再生しています。
参考記事:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/062400322/
この方法では、本来その土地に植生すべき樹木を植え、自然に生えてくるはずの森林に戻していく手法です。
沢山の土地は必要とせず、幅1〜2メートルの狭いスペースでも森林を作ることができるため、その手法自体が評価されつつあるそうです。
質疑応答
勉強会の後半では、参加者からの質問に目黒先生が答える形で質疑応答が行われました。
以下にその一部を紹介します。
Q.地球環境対策として、国家がやること、企業がやること、個人でできることがあると感じた。個人としてできることには限界があるが、何からしていけばいいと思うか
▼目黒先生の回答
植林を国主導でやりましょう、と言ってもうまくいかない。なぜなら苗木の育成体制がないので植えようがない、人もいないという状態。
また、続けていくことを考えると、理解して実践する人をどのくらい増やすのかが重要と考えている。
この活動を通して、意味をどう発信していけるか?を望んでいる。
まずは始めること、いろんなタイプの人を集めて進めていけるようにすることからだと思う。
山梨県で同様の形式で行なっているところがない。率先してやってみてほしい。
Q. 人間の文明生活を、どう地球環境と共存させればいいか。企業の行動として、環境ビジネスを進めているところがある中、どうお考えか?
▼目黒先生の回答
グリーンウォッシュがヨーロッパでは指弾されることが増える。日本自体が、あるもので満足する(少欲知足)という考えが昔からあった中で、今はなくなりつつある。
満足がいく、より良い生活、ということ自体を考え直す時代が来ている。その考えを教えられるのが宗教ではないか、と思っている。
最後に
目黒先生の講演を通じて、「人間がこれまでやってきたことの因果」、まさに結果が今のような激甚化する災害につながっている、自然に仕返しをされている、という状態が起きている、ということを想いました。
一方で、目黒先生から我々に、こういうメッセージをいただきました。
本来の植生を復活させる本物の技術があると自負している。その担い手がたくさん欲しい。なるべく早く取り組める場所があるなら取り組みを進めたい。SOCIALTEMPLEのみなさまがやろうというなら力を貸したい。私も試されていると気付いた。正々堂々と一緒にやりましょう。
その力強いメッセージをいただき、少しでも山梨から、自然を、環境を変えていく運動を進めていきたいと改めて思いました。
「植林」事業については、引き続きお寺のじかんなどで発信してまいります。
今後とも応援のほど、よろしくお願いいたします。