『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』【書評】 – 横山瑞法の別に危なくない法話 vol.14 –
たまには本の紹介でもしてみたいと思います。
『自分とかないから。教養としての東洋思想』しんめいP (著), 鎌田東二 (監修)
完全に乗り遅れましたが読みました。
業界界隈で話題になっているだけと思っていたのですが、ところがどっこい4月の発行から半年たらずの9月の時点ですでに10万部を超えるヒットだそうです。
これ系の書籍としては、久々のヒットなのではないでしょうか。
著者のしんめいPさんは、東大卒の地元では”神童”と呼ばれるほどの秀才で、就活までは上手く行ったのですが、その後、決定的に”仕事ができない自分”に気づき、IT企業に期待の新人として入社しますが、その期待に答えられずに退職、その後も分野を変えてチャレンジしましたが、それも上手くいかず実家に戻り、世間から身を隠して引きこもるような生活を余儀なくされます。そんな中で出会ったのが東洋思想だったそうです。
本書は東洋思想についての入門書ですが、その内容はほとんど仏教思想の解説と言っても過言ではありません。
ブッダや龍樹、老荘思想、達磨(禅)、親鸞、空海といった東洋の偉大な思想家たちが、チャラいというかカジュアルな語り口で描かれており、筆者の体験談や例え話を通して、難解なイメージを持つこれらの思想を身近に感じられます。例えば、龍樹を現代の某論破系の有名人に例えるなど、ユニークな例え話や体験談も交えており、「龍樹をあの人に例えるかー!」と思わず驚いてしまった同業者も多いのでは。こうした独特のアプローチは、決して学者さんやお坊さんにはなかなか書けないものであり、本書の大きな魅力となっています。
使っている言葉も、難しい用語は「これとしか言いようがないよね」というもの以外、ほとんど使われておらず、専門知識がなくてもスムーズに読み進められます。一人の人間が東洋思想に触れ、よりよく生きられるようになる過程が綴られたエッセイのようになっており、学びとともにこの本が書かれたことも読み進めると伝わってきて、文章に自然な流れと深みを与えています。
そして、この本ですがただ触れやすいようにだけ書かれた訳でな衣ことが、巻末の参考文献に関する箇所を見てもわかります。
著者はかなりの書籍を読みこなし、実際に修行を体験してきたことがわかります。その探究心と実践に裏打ちされた解説に、軽やかな説得力があることにも頷きます。
また、監修の鎌田東二先生の授業を大学時代にとっていた事もあり(宗教哲学だったかな…?)、そういった点で個人的に親しみを持てる本でもあります。
東洋思想や仏教に興味がある方はもちろん、これから学んでみたいと思っている方にもおすすめです。難解な哲学をカジュアルに楽しめる一冊、「自分とかないから。教養としての東洋思想」をぜひ手に取ってみてください。
きっと、この本を入り口に新たな発見や気づきが得られることでしょう!
別に危なくない東洋思想入門書です!!