お寺豆知識 第11回 五節句のひとつ 端午の節句 〜鯉のぼり編〜

お寺豆知識 第11回 五節句のひとつ 端午の節句 〜鯉のぼり編〜

【五月病になっていませんか?】

GWも終了し皆様も社会生活に戻られているのではないでしょうか。

ご実家に戻られた方、行楽にお出かけの方と様々な大型連休を過ごされたことと思います。

また〝五月病〟という言葉もあるように、息を抜きすぎてある意味の〝社会復帰〟がうまくできない方もいらっしゃるかもしれませんね。

坊主道メンバー 臨済宗妙心寺派、観音寺住職の藤岡宗順と申します。

5月には大きな仏教行事はありません。

しかし私たちは人生を〝修行〟と捉え、生活していくことを考えねばなりません。

様々な行事にも生き方のヒントになることはあるはずです。

そこで今回は五節句のひとつ、「端午の節句」について書いてみたいと思います。

[節句とは何か]

節句と聞くと3月3日の桃の節句や5月5日の端午の節句を思い浮かべると思いますが実はそれだけではないことご存知でしたか?

節句とは、日本の四季や季節の節目に伝統行事を踏まえて祝う式日のことです。

1月7日 人日(じんじつ)の節句

3月3日 上巳(じょうし)の節句

5月5日 端午(たんご)の節句

7月7日 七夕(しちせき)の節句

9月9日 重陽(ちょうよう)の節句

以上、全部で五つの節句が存在します。

[端午の節句の由来]

諸説あるようですが中国の道教の祭事からきているようです。

中国では昔から5月(旧暦)の時期は病気が流行し、亡くなる人が多かったことから5月は悪月、5日は5が重なることから悪日として厄除けに菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)を門に挿し、菖蒲を浸したお酒を飲んで厄除けや健康祈願をしていたようです。

このような風習が奈良時代の日本に伝わり、やがて日本独自の端午の節句の風習となったようです。

[鯉のぼり]

日本における端午の節句の象徴的なものである鯉のぼりについても諸説ありますが中国の故事からヒントを得たともいわれています。

その故事というものは「黄河の激流に竜門と呼ばれる滝があり、その滝を登ろうと多くの魚が試みたものの、登れたのは鯉だけで登りきった鯉は竜になった」というものです。

また鯉は清流に限らず環境がよいとはいえない池や沼でも生きていける生命力の強い魚でもあります。

このようなところから、どのような劣悪な環境においても生き抜くことができる逞しさを備え、立派に成長して欲しいという願いも込められているのではないでしょうか。

また仏教では河の流れを譬え(たとえ)としてよく使います。

苦しみの世界であるこちらの岸(此岸 しがん)から、煩悩という激流に流されることなく安らぎの世界である向こう岸(彼岸 ひがん)に渡ることを示す譬えです。

渡るためには筏(いかだ)が必要で、筏は仏様の教えと実践だと譬えます。

【鯉のぼりといのち】

地域によっての違いや風習もあるので一概には言えませんが、春のお彼岸(春分の日)が過ぎれば飾ってもよいといわれています。

概ね3月下旬から4月上旬頃に飾り付けるのが一般的で片付ける時期は端午の節句が終わり5月中旬頃までが目安のようです。

また旧暦の端午の節句は約1カ月遅れになるため地域によっては6月上旬まで鯉のぼりを飾っているケースもあるようです。

このように節句には長い歴史があり時代が変わるにつれてその風習も変化してきたのではないでしょうか。

こうして少しでも節句の歴史や由来などを知るとより行事も楽しめるようになりそうですね。

そして行事を通して自分自身を振り返り、その生き方を考えるきっかけとしてもらうことで行事の意義も大きく高まります。

移動の道中でも鯉のぼりを見かけた際には、お子様が無事に誕生したことや〝今ここにある命〟また周囲の人々の命に感謝し、来年も節句を元気に迎えることができるように過ごしてみてはいかがでしょうか。

合掌