遠藤卓也の○○寺探訪 Vol.0「探訪のはじまり」
お寺界隈の渡辺篤史さんを目指して
どうも、遠藤卓也です。
私は全国各地の活動的なお寺さんとのつながりを活かして、現代の多様で面白い「お寺文化」を社会に発信していきたいと考えて様々な活動をしています。
この連載は「遠藤卓也の○○寺探訪(まるまるでら たんぼう)」と名付けました。かの有名なTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」へのオマージュです。
※番組についてご存知のない方は公式ホームページをご参照ください
https://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/
仕事柄、様々なお寺を探訪してご住職にお寺の案内をしていただくことが多いです。その経験から、お寺のかなりニッチな細部まで気づいてリアクションができるようになりました。
「へー、本堂のバックヤードがかなり機能的に作り込まれていますね」
「うわ、ここまでバリアフリーが徹底されているとは」
「なるほど、ここで待っている間に寺報を読んでもらおうという意図ですね」
「ちゃんと、スピーカーはBOSEだ(笑)」
こんな風に、お寺探訪時はどれだけ気づいてリアクションができるか?を楽しんでいるのですが、ふと自分が渡辺篤史さんに重なることがあるんですね。
「そうか、自分はお寺界隈の渡辺篤史さんになろう!」
いつしかそんな夢を持つようになりました。
少し調べてみると、芸人の千原ジュニアさんは渡辺篤史さんに憧れて、ご自身のYouTubeチャンネルで芸人仲間のマイホームを探訪されているようです。
自分もいつかは動画で「お寺探訪」をしてみたいと思いつつ、まずはテキストと写真でも「お寺探訪」の楽しさを伝えられないかと模索をし始めました。
住職たちの共感覚
2025年5月と6月に同世代のお坊さん仲間たちとお寺の視察ツアーを行いました。寺院運営やまちづくりに関する勉強のツアーですが、どちらのお寺もなかなか「クセ強」なお寺であるため、これはもしかしたら「探訪」記事化のチャンスかも?そんな狙いも持ちつつ、写真を撮ったりみんなの会話をAIデバイス(PLAUD)で録音させてもらいながらツアーに参加しました。
複数のお坊さんと一緒にお寺を巡ると、やはり同業目線でのコメントが飛び交うので、自分としてはすごく勉強になります。
「そんな観点もあるのか!その発想はなかったな。」お寺が仕事場である住職同士の共感覚は、探訪者風情の自分には決して持つことができないなあとジェラシーさえ覚えます。
やはり自分はまだまだ駆け出しの探訪者ゆえ、面白おかしく「お寺探訪」を書くことは難しいか、、、と新たなハードルの存在を感じ始めた時に、6月の視察先の静岡県藤枝市 大慶寺の住職 大場唯央(おおば ゆいおう)さんが一つの切り口を授けてくれました。
それが連載タイトルにある「○○寺」というキーワードです。
大慶寺は「貸別荘寺」を目指す
大場さんはお寺の住職でありながら、藤枝市のまちづくりにも関わっています。町づくりを行なう一般社団法人を仲間たちと立ち上げて、人と人を繋ぎ、人と建ものを繋いで、藤枝の蓮華寺池公園というエリアの活性化に一役かっている人物です。
「お寺は地域資源の一つである」と考える大場さんは、住職でありながらお寺ばかりを主体にするのではなく、お寺を地域にある一つの資源としてどのように活用してもらえるか?という目線で動いています。
昨年、大場さんはクラウドファンディングに挑戦しました。クラウドファンディングの目的はなんと「お寺に貸別荘をつくりたい」というもの。これが目標金額を上回る350万円を達成し、現在境内では建築が進んでいます。(クラウドファンディングで集まったは建築費の一部として活用予定)
お寺の宿泊施設としては「宿坊」が思い浮かびますが、大慶寺には宿坊ではなく「貸別荘」を建てる。大慶寺は「貸別荘寺(かしべっそうでら)」になるのだと、大場さんは宣言しています。
観光寺、檀家寺、祈祷寺など、お寺の主たる布施収入の種別でお寺の特徴を大別することがあります。大慶寺は「檀家寺」を主体としながら、日蓮上人のお手植えと言われている樹齢750年の「久遠の松」があるので「観光寺」の一面もありますし、日蓮宗のご祈祷も行なうので「祈祷寺」の一面もあります。そこに加えて「貸別荘寺」の一面を加えていきたいという意気込みです。
確かに、境内に貸別荘が建てば「貸別荘寺」と名乗れるでしょう。
その場にいた、静岡県伊豆の国市にある正蓮寺さんは境内でたくさんの蓮を育てているので「伊豆のハス寺」を名乗っています。栃木県宇都宮市 光琳寺さんは境内の会館「aret(アレット)」にコワーキングやシェアオフィスの機能を持たせているので「コワーキング寺」と言えそうです。
他にどんな「○○寺」が考えられるか、場がひとしきり盛り上がりました。
探訪のはじまり
大場さんはこう言います。
「お寺も檀家寺、祈祷寺、観光寺だけじゃなくて、その他の違う呼び方のお寺のあり方も増えていけばいいのになあと思っています。限られた役割だけだと時代の変化によって総崩れになって、お寺が成り立たなくなってしまう恐れもあるので、色々なお寺のパターンを作っておくっていうのが大事だと考えています。それで大慶寺はこれから「貸別荘寺」にチャレンジしていきます。」
確かに、お寺のポートフォリオを多様にしていくことは、これからの時代にとても大切になっていくと私も考えていました。
そして、活動のテーマやコンセプトをわかりやすく「○○寺」として冠してしまうのはわかりやすくてキャッチーです。
「こんなお寺もあるよと示していけば、じゃあうちの寺はこれにしようとか考える人が他にも出てきて、色んなバリエーションのお寺が増えたらもっといいですよね。」
全く同感です。お坊さんや寺族たちにとっても、お寺の新しい可能性を模索する動機やモチベーションにつながったら、尚のこといい。
では、自分は各地のお寺とのネットワークを活かし「○○寺」を名乗るお寺や、目指すお寺を探訪して、一つ一つ紹介していく連載をしよう。そう思いついたのです。
いつかは動画で「お寺探訪」をしたいと願いながら、まずは文字と写真で「○○寺」という切り口で「お寺探訪」を始めたいと思います!
そんなわけで次回、Vol.1は「貸別荘寺」を目指す大慶寺を探訪します。なぜ「貸別荘寺」を目指すのか?その理由を深掘りして聞いてみます。お楽しみに!!