お寺豆知識 第12回 「仏教と福祉」

お寺豆知識 第12回 「仏教と福祉」

【お寺は先祖供養するところ?】

坊主道メンバー、南アルプス市日蓮宗法源寺住職の横山瑞法と申します。
私は、住職としてお寺を預かりながら、高齢者福祉施設にも勤務しています。
そんな私からは、今回のお寺豆知識は「仏教と福祉」というテーマでお送りいたします。

日本最初の福祉施設はお寺から始まった!?

お寺(四天王寺写真)

日本最初の福祉施設は、聖徳太子が創建した四天王寺にあった悲田院だと言われています。
聖徳太子は、四天王寺を創建するにあたり「四箇院の制」をとり、敬田院(きょうでんいん)、施薬院(せやくいん)、療病院(りょうびょういん)、悲田院(ひでんいん)の四つ境内に設置しました。
そして、この中の「悲田院」が貧困で苦しむ人や身寄りのない人々を住まわせて飢え苦しまないようにする場所であったといわれています。

ちなみに、他の3つについて簡単に説明すると

敬田院 … 仏教を学ぶ道場
施薬院 … 薬草を栽培し薬を施す場所
療病院 … 病人を寄宿させ療病する場所

であったといわれています。

では、なぜわざわざお寺の中に福祉施設が作られたのでしょうか。

仏教と福祉

仏教は「慈悲」の宗教であるといわれます。
慈は「慈しみ」、悲は「哀れみ」を意味し、仏様の慈しみ哀れみの心はすべての人々に平等に降り注がれるものであります。
そして、苦しむ人々に対する慈悲による救済として具体的に行われたのが、仏教的な救済事業であり、その実践の場として「悲田院」(福祉施設)がお寺の中に作られたのです。

歴史をひも解いてみると、聖徳太子の四天王寺だけでなく、光明皇后も東大寺に「悲田院」と「施薬院」を置いたとされていますし、行基は困窮者向けの無料宿泊所である「布施屋」を設けました。
その他にも、現在に至るまで枚挙に暇がないほど多くの寺院と僧侶が、人々を救済する慈悲の実践としての救済事業を行なっています。

「福祉」とは端的に言うと「人々の生活に幸せをもたらすもの」です。

仏教と福祉は、「人々を救い、幸せをもたらす」という点で繋がり合っているということができます。
それ故に、当時は「福祉」という言葉はありませんでしたが、多くのお寺や僧侶が行なってきた救済事業が、今日になり「福祉事業」として評価されているのです。

福祉イメージ写真

おわりに

言うまでも無く、現代においても多くのお寺や僧侶が福祉事業に取り組んでいます。
保育園をはじめとして、お寺が運営している福祉施設は結構多いのです。
かく言う私が勤めている福祉施設もお寺が運営の母体となっています。

「そういえば、近くの福祉施設はお寺でやっているところだったな」と思い当たる方もいるのではないでしょうか。

あなたの身近にある「仏教と福祉」の繋がり、ぜひ探してみてください。