あさってから山梨で作品展開催!僧侶・消しゴムはんこ作家 麻田弘潤さんインタビュー

あさってから山梨で作品展開催!僧侶・消しゴムはんこ作家 麻田弘潤さんインタビュー

仏教×アートのはなし

<お寺のじかん>をご覧いただきありがとうございます。僧侶でフリーアナウンサーの海野紀恵です。

物心ついた頃から絵を描くことが苦手で、大人になってからは下手すぎる絵をネタにしている私ですが、美しいものに出会うと人一倍心動かされます。お寺にも緻密な装飾があったり、独特な色づかいで仏教の世界を表現する絵画があったり…。お寺のお堂や境内で「おぉ…」とつぶやきながら立ち止まってしまうこともしばしば。仏教とアートは深く繋がっているのだなぁと感じます。そこで今回は、仏教とアートの話題です。

<消しゴムはんこ>で描くおどろきの作品

私は今、長野県を拠点に活動しているのですが、去年10月に長野県内のお寺でおどろきの襖絵と出会いました。

なんとこの襖絵、<消しゴムはんこ>で描かれているのです!

大小さまざまなパーツを組み合わせ、広い襖に鳳凰を描いたそうです。

この襖絵を手がけた、僧侶で消しゴムはんこ作家の麻田弘潤さんにお話を伺いました。

消しゴムはんこがひらく新たな世界

麻田さんは、新潟県小千谷市にある極楽寺(浄土真宗本願寺派)の住職をつとめながら、消しゴムはんこ作家として活動。作品づくりはもちろん、各地でワークショップを開催し全国的に活躍されています。

麻田さんと消しゴムはんこの出会いは今から20年ほど前。新潟県中越地震の復興イベントとして極楽寺ではじまった<極楽パンチ>のオリジナルエコバックづくりがきっかけだったそうです。麻田さんの作品は、仏像やお地蔵さんといった仏教のモチーフも多く、消しゴムはんこを通して、仏教の影響を受けた自身の姿を表現しています。

Q.20年近く僧侶・消しゴムはんこ作家として活動されていますが、消しゴムはんこの魅力は
どのようなところですか?

消しゴムはんこはとても優秀なコミュニケーションツールだと思っています。

私は2004年に発生した新潟県中越地震で被災しました。当時、極楽寺の本堂は新築で、大きな被害を免れたので、避難所としてさまざまな方の生活の場となりました。この経験は、私にとってのターニングポイントとなるのですが、中越地震以降、災害が発生した地域へボランティア活動に行くようになりました。2011年の東日本大震災のときもボランティアとして現場で活動していたのですが、その時に同期の僧侶に声をかけてもらって仮設住宅でオーダーメイドの消しゴムはんこをつくるという活動をしたんです。仮設住宅で暮らす方から注文をもらって、それを彫り始めるのですが、1つ作るのに30分くらいはかかります。この時間にぽつり、ぽつりとその方が地震や津波で経験したことや、「みんなが辛い思いをしているのだから」と胸の奥にしまっていた思いを語ってくれたんです。私ははんこをつくっているし、相手もはんこが出来上がる過程を眺めている。ダイレクトすぎないこの距離感が良かったのだと思います。災害が起こると僧侶がボランティアとして現場に入り、「お役に立てることはありませんか?」と被災した人たちの心に寄り添おうとします。でも、そこで本当の気持ちを聞くことはとても難しいと思います。そんななか、私は消しゴムはんこを通して、心の内に触れることができた。僧侶は様々な人とコミュニケーションをとってこそ意味のある存在だと思っているので、消しゴムはんこを自分の活動に積極的に取り入れようと思いました。

Q.住職と消しゴムはんこ作家のお仕事を両立されているととてもお忙しいと思いますが、それでも活動を続けられているのはなぜですか?

見える世界や人とののつながりが広がるので、消しゴムはんこ作家としての活動を続けています。

消しゴムはんこを作ったり、イベントの開催を続けていると、様々な立場の方や、多くのプロフェッショナルと出会うことができます。そこで得た知識や経験を僧侶として生かすことができるので、作家としての活動を続けています。僧侶の世界はとても狭く、伝統や様式を重んじる凝り固まった業界だと思っています。私はそれに疑問を持っていて、多くの僧侶が持っている正解とは違うパターンを実践して、<正解は一つではない>ということを示したいです。きっとこれは、私が生きている間に完成するものではなく、何百年とかかってしまうことかもしれないですが、その第一歩になれればと思います。

あさって(7月20日)から開催!<消しゴム仏はんこ展>

さて、そんな麻田さんは、あすから山梨県北杜市で初の作品展を開催します。

会場は、今年で開館30周年を迎える安達原玄仏画美術館。開館30周年を記念した企画展のひとつが麻田さんの「消しゴム仏はんこ展」です。麻田さんが生みだす、柔らかい雰囲気で心に寄り添ってくれる仏さまの姿を節目の年に展示したい、という安達原館長の思いから作品展が実現したそうです。

Q.あさってから山梨県北杜市の安達原玄美術館で作品展がはじまりますが、初の作品展なのですね!

これまでは納期までに依頼されたものをつくるという形だったので、時間やデザインなど制約のあるなかで作品をつくってきました。今回作品展のお話をいただき、制約を取り払った環境で作品がつくれるということにワクワクしています。出品するのはこれまでに彫った判を使った作品ですが、時間の制約があるなかで押した作品と、制約がない状態で押した作品には変化があると思います。その変化が自分でも楽しみですね。

Q.どのような作品が見られますか?

仏像やお経に登場する鳥たちなど、仏教に関連した作品を展示する予定です。インスタグラムの動画で紹介している作品を間近で見ていただけます。初めての山梨、初めての作品展ですので、ご来場いただけると勇気づけられます。ご来館お待ちしています。

麻田さんの作品は温かい雰囲気のものばかりで、お話も血の通った言葉が優しく紡がれます。柔らかさのなかにも芯がある、麻田さんの世界に触れてみてはいかがでしょうか?

【消しゴム仏はんこ展】

7月20日(日)〜7月27日(日)

安達原玄仏画美術館

26日・27日作家在館日

27日(日) 午後1時〜1時30分 法話(定員なし・無料)