ジャイビーム!人生初インド、佐々井秀嶺さんに会いに行ってきました。
ナマステ。いや、ジャイビーム!
お寺ステイCYO(チーフ山梨オフィサー)の中嶋 雄士(なかしま ゆうし)です!
今年7月、初めてインドを訪れました。行き先はインドの真ん中ナグプール。インド仏教の聖地でもあります。
目的はただ一つ。インド仏教を率いる佐々井秀嶺上人。
現地では「バンテージ」と呼ばれている方で、日本語で言えば“お上人様”のような敬称です。
きっかけは小野龍光さん
最初のご縁は、サハラマラソン仲間の小野裕史さんでした。
スーパー起業家としても知られる彼が、インドで佐々井さんに会い、そのまま出家して「小野龍光さん」として帰ってきたんです。
小野さんと飲み会をした時の写真。(左の前から二番目が小野さん、一番後ろが僕)
当時の僕は仏教にまったく興味がなくて、「小野さん、相変わらずおもしろ!」くらいにしか思っていませんでした。
ところがその後、白石あずささんの『佐々井秀嶺 インドに笑う』を読み、お坊さんなのに、かつては欲にまみれた僕よりも、ずっと欲にまみれた人生を歩んできたことを知り、とても親近感が湧いてしまいました。
「これは絶対一度お会いしたい」と思い続け、今回ようやく会いに行くことができました。
「インドには行くべき時期がある。その時期はインドが決める」という言葉がありますが、ずっとインドには呼ばれている気はしていたのだけど、食わず嫌いでインドをずっと拒絶していて、やっと導かれるようにしてインド行きを決めました。
「ジャイビーム!」に包まれて
インドラ寺を訪れると、20人ほどの女性信者さんが一斉に「ジャイビーム!」と合掌して迎えてくれました。
僕も思わず「ジャイビーム!」と返しましたが、この言葉には深い意味があります。
ナグプールのいたるところに設置されている、アンベードカル博士の像。
「ジャイ」は万歳、「ビーム」はアンベードカル博士の名。
不可触民出身でありながらインド憲法を起草し、ナグプールで仏教に改宗した博士への敬意と感謝を込めた言葉です。
博士の改宗によって、この地はインド仏教の聖地となりました。
だからこそ、ここナグプールの仏教徒はお互いに「ジャイビーム!」と挨拶するのです。
目の前で感じた「カースト」
ここで少し、インドの「カースト制度」について触れたいと思います。
カーストとは古代から続く身分制度で、人々を生まれによって分け、不可触民とされた人々は「触れることすら汚れ」とされてきました。
今では憲法で禁止されていますが、日常生活にはまだその名残が強く残っています。
僕自身、それを到着した日の空港で目の当たりにしました。
掃除をしているおばちゃんに、ごみを手渡すのではなく、投げつけるようにごみを捨てた年配の男性を見たのです。
「あ、これがカーストってやつか」と直感的に理解しました。
日本の常識ではありえないことが、ここでは当たり前のように行われている。その瞬間、すごく嫌な気持ちになりました。
同時に、普段あたりまえに思っていた日本の道徳観や、人への優しさにどれほど恵まれていたかを改めて感じ、ありがたい気持ちが湧き上がりました。
人間味たっぷりの90歳
今年の8月30日で90歳を迎えられたバンテージ。身体は痩せこけているものの、もともと武術をされていたこともあり、足取りはとても力強いものでした。
普段の声はか細く、聞き取りにくいこともあるのですが、お弟子さんを叱るときだけ(といっても愛にあふれた叱責)、いきなり100倍くらい大きな声が響き渡り、場の空気を一瞬で変える。その迫力に、何度もびっくりしました。
佐々井秀嶺(バンテージ)が椅子に座りマイクを持って法話をし、床に座った信者の人々が熱心に耳を傾けている。
信者の女の子の頭をたたきながら、祈りをささげるバンテージ
屋外で、オレンジ色の袈裟を着た佐々井秀嶺(バンテージ)が、インド人の男女信者と共に、黄色いシートで覆われた仏塔の前で静かに手を合わせ祈りを捧げている後ろ姿。
仏教遺跡をまわり、信者さんの家を訪ね、倒れたストゥーパの再建を相談されては遠出して何度もお経を唱える。
そしてときには戦前の漫画「のらくろ」や「冒険ダン吉」の話題で盛り上がる。
そんな柔らかさと迫力の同居が、人々に頼られ、インドのために尽くすバンテージの一番の魅力です。
インド仏教指導者の佐々井秀嶺(バンテージ)が、手塚治虫の漫画『ブッダ』を手に持ち、嬉しそうに微笑んでいる様子
僕が好きな手塚治虫の『ブッダ』については「お坊さんに必要なことは全部書いてある」と断言されていたのも印象的でした。
ソース焼きそばの思い出
好物であるソース焼きそばを食べるバンテージ。
小野さんのアドバイスで持参したカップ焼きそばは大好評。
何度も「美味しいね」と言いながら、「昔は給料をもらったら浅草に焼きそばを買いに行ったんだ。ソースの匂いがいいんだよ」と、嬉しそうに食べてくださいました。
塩焼きそばも美味しかったけど、やっぱりソースがいいとのこと。
他の麺類も持って行ったけど、圧倒的ソース焼きそばが良いみたい。
佐々井さんを訪れる方は是非参考までに!
「ボン」と呼ばれて
僕は仏教初心者なので勉強不足過ぎて、話が理解できないことが多々ありました。
「僕みたいな人が来ることについてはどう思いますか?」と不安とともに聞いてみたのですが、バンテージは「仏教に興味があって、学びたいと思って来てくれたなら嬉しい。仏縁を作って帰りなさい」と言ってくださいました。
筆者(眼鏡をかけた若い男性)が、佐々井秀嶺(バンテージ)の隣で撮ったツーショット自撮り。バンテージは椅子に座り、穏やかな笑顔を浮かべている。
さらには「ボンボンみたいな顔をしているな」「ちょっと食べすぎじゃないか」と言われ、途中からは「ボン」と呼ばれていました。
普段、自分のお気に入りの本名で呼ばれることしかないので、あだ名で呼ばれることには違和感を感じるのですが、僕自身もこのあだ名は結構気に入っています(笑)
使命感に生きるということ
「嫌いなインド」「嫌いなインド人」「嫌いなインド料理」と本人が口にしながらも、インドに帰化し、アンベードカル博士の意思を継いでカースト制度の撤廃に挑み続ける。
僕がお会いした人の中で、ここまで使命感に燃えて生きている人はいません。
僕自身は恥ずかしながら、まだ人生に迷える子羊です。
だからこそまた会いに行って、そのうち僕も命を燃やせる使命を見つけて、全うしたいと思っています。
ご縁の広がり
帰国後もご縁は続き、映画『ジャイビーム』の竹本泰広監督と交流する機会をいただきました。
間違いなく、人生が加速していると感じます。映画はドキュメンタリーで、僕が見たままの飾らないバンテージがそこにいました。
これから知る人へのおすすめ
もしまだ佐々井秀嶺さん(バンテージ)を知らない方がいたら、ぜひ触れてみてください。
- 白石あずささん『佐々井秀嶺 インドに笑う』
- 山際素男さん『破天』
- 竹本泰広監督の映画『ジャイビーム』
どれも、バンテージという人物を知るための最高の入口になるはずです。そして、僕みたいに、インドに呼ばれてしまうかもしれませんけどね。
それでは皆さん、ジャイビーム!!!
