お寺さんの音景色 Vol.11|神奈川県足柄上郡 最明寺の「善光寺如来護摩法要」と小川のせせらぎ
2025年3月に一旦ひと区切りとしていたこの連載『お寺さんの音景色』ですが、時折、各地のお寺で出会う素敵な音景色をご報告していきたいと思います。
今回ご紹介するのは、神奈川県足柄上郡にある、東寺真言宗 最明寺にて行われた「相州善光寺如来護摩法要」の音景色です。
豊かな自然が魅力のお寺
小田急ロマンスカーにのれば新宿から1時間弱で着く新松田駅から車ですぐの場所に、最明寺はあります。山を背負う場所に立つ最明寺には豊かな自然があり、都会と田舎のちょうどよいミックス加減がお参りの楽しみと便利さを広げてくれています。
特に私が気に入っている最明寺の音景色は、境内を流れる小川のせせらぎです。山から流れてくる澄んだ水が透明できれいで、思わず足を浸したくなるような雰囲気。サワガニやモリアオガエルなど多様な生物が棲息しています。

小さな石橋を渡り、墓地の入口にある永代供養墓は「潺蛍廟(せんけいびょう)」という名が付いています。”初夏に蛍が舞い、潺々(せんせん)と流れる小川のせせらぎが響く場所にある” という由来のネーミングが素敵です。
“潺々(せんせん)と”という表現は日常的にあまり使いませんが、その小川のせせらぎに耳を澄ましていると、その表現のこころがわかるような気持ちになってきます。
歴史ある「善光寺如来護摩法要」
橋の手前には「善光寺堂」があります。これは本堂とは別の建物で、渡り廊下でつながっています。「最明寺なのに善光寺?」と思われるかもしれません。
実は、最明寺は「相州善光寺如来」とも呼ばれており、長野の善光寺とご縁の深い仏様がまつられています。その善光寺如来様への信仰は、この地で実に800年(!)も続いている、由緒正しいお寺なのです。
その「善光寺如来様」の護摩法要が、毎年8月20日に祈願祭としておこなわれています。複数のお坊さんたちによる盛大な法要が行われる中、住職さんが護摩を焚き続けます。
ご存知ない方のためにご説明をすると、護摩祈願とは本尊様の前で護摩壇の炉に護摩木をくべ、その炎で煩悩や災いを焼き尽くし、心身を清め、除災招福・開運厄除などの願い事の成就を祈るという密教の秘法・儀式です。

私もはじめて参加した時は驚きましたが、室内でそれなりの大きさの炎が燃えるのでかなり迫力があります。事前にお預かりしている願いが書かれた御札を護摩の炎にくぐらせて加持し、願いを届けるのです。
両立させたい2つの音景色
今回、護摩法要の音景色を録音させてもらうにあたって少し早めにお寺に行き、どこにマイクをセッティングするか検討をおこないました。境内を歩き回る中で、どうしても小川のせせらぎ音に惹かれて、川のそばにマイクを立てたい気持ちになってきます。
しかし、法要は善光寺堂の中でおこなわれます。堂内でもえさかる炎と、読経の迫力も捨てがたい、、、。
火と水、賑やかさと静けさ。双方を感じられる場所はないだろうか。どう考えても、物理的に距離や壁が障壁となり、そんな場所は考えられません。そこで、たまにやる手法として、それぞれの場所で録った音源を、あとで編集でミックスすることを思いつきました。

小川にかかる石橋の上に簡易なマイク&レコーダーを設置して、善光寺堂内には内陣のお坊さんの導線をさけつつも、可能な限りアプローチできる場所に2本のマイクを立てました。
白熱の法要と涼しげなせせらぎ
暑さが少しやわらぎはじめる夕方の刻に、いよいよ法要がはじまります。本堂を通り渡り廊下を経て、お坊さんたちが善光寺堂に入堂します。
鐘、法螺貝の音がはじまりを告げ、僧侶たちの声が重なり合っていきます。徐々にお経が盛り上がり、堂内の炎も激しくなっていきます。
法要の大サビはやはり「般若心経」でしょうか。太鼓や鈴のような仏具が鳴らされ、テンポも早まります。お坊さんそれぞれの声の特徴や出し方の違いがなんともかっこいい。

堂内では白熱の法要が繰り広げられている間も、お堂の脇を流れる小川は潺々と流れてせせらぎ続けています。自分は堂内にいたので、その音は聞こえていませんでしたが、近くに設置したマイクが同じ時間のせせらぎ音を収録し続けてくれていることで、その水の透明感や冷たさまで伝わってくるかのようでした。
「音」を介して祈りを届ける
30分ほど続いた法要は、今年も無事に終わりました。最明寺をとりまく皆さんの願いが、仏様の元に届いたのだと思うと、毎年このように多くの宗教者や寺族が関わって法要が勤められていることや、これまで善光寺信仰が続いてきた歴史の尊さに、ありがたく合掌したくなります。自然に手があわさるのです。
善光寺如来は秘仏のため、お姿は見えないのですが、目には見えない仏様に対して「音」を介して祈りを届けることが、この法要のひとつの大きな役割なのだと思いを馳せました。
お経サウンドスケープ|沢のせせらぎと相州善光寺如来護摩法要
後日、護摩法要の音と、小川のせせらぎをミックスしてみました。水のせせらぎの冷たさと、法要の熱気が混じり合う、なんともいえず心地よい音景色になりました。
ぜひ、みなさんもこの音源を聴くことで、最明寺の魅力を実感してみてください。
「相州善光寺如来護摩法要」は2026年も開催予定です。日程などの詳細は最明寺のSNSなどで告知があるかと思いますので、ぜひフォローしてお待ち下さい。
最明寺 Facebook|https://www.facebook.com/saimyoujitemple
おまけ|道中寄るならこんな店
・エプーゼ(神奈川県小田原市栢山)
美味しいコーヒーと素晴らしい音響でクラシックが聞けます。食事もボリューミーでなんでもおいしい!

