甲府盆地を望む本堂から-お寺で迎えた初めてのお正月-

甲府盆地を望む本堂から-お寺で迎えた初めてのお正月-

松の内を過ぎ、寒さの中にもようやく落ち着きが戻ってまいりました。 皆様、いかがお過ごしでしょうか。

私は、山梨県甲府市の曹洞宗寺院の寺族(僧侶の他にお寺で生活する人のこと)のユキと申します。

私にとって、今年のお正月は一生忘れられないものとなりました。というのも、お寺の住職と結婚して初めて迎える「お正月」だったからです。

これまでは参拝する側として親しんできたお寺の行事ですが、立場が変われば見える景色も変わります。お迎えする側としての責任を感じながら駆け抜けた日々を振り返ってみたいと思います。

終わりの見えない大掃除

まず驚いたのは、お寺の掃除の規模の大きさです。夫がお預かりする3つのお寺の大掃除は想像を超える作業量でした。

住職と私のふたりだけで担当したお寺は、本堂や客殿の隅々まで埃を払い、窓を拭き、境内の落ち葉を集める日々。12月に入ってすぐに始めたものの「このままでは、すべてを整えられないうちに年が明けてしまうのではないか」と、焦る瞬間もありました。

救いの手:お檀家様と共に行った大掃除

そんな中、3ヶ寺のうちの1つでは、お檀家様たちが大掃除に駆けつけてくださいました。

皆様、慣れた手つきでテキパキと綺麗にしてくださり、その姿にとても救われました。一人では手の届かない高い場所や広い境内も、皆様の力が合わさることでみるみるうちに綺麗になっていきます。

お寺は、こうして代々支えてくださる皆様の想いで守られているのだと、作業中の賑やかな笑い声を聞きながら実感しました。おかげさまで、12月30日には無事にすべての準備を終えることができました。

お寺の大掃除

疲れをほぐしてくれた父からの「年越しそば」

大晦日、ようやく一息ついた私たちが口にしたのは、私の実家の父が送ってくれた「生そば」。お寺の仕事で忙しく過ごす私を気遣ってのことでした。

打ちたての香りが豊かな生そばを茹で上げ、住職と2人で「美味しいね」と言い合いながら啜ったあの味は、疲れ切っていた体をふわりと解きほぐしてくれました。

年越しそば

一年の締めくくり「除夜の鐘」

食事を終え、いよいよ日付が変わる頃、住職が突く「除夜の鐘」が始まりました。 冷たく澄んだ夜の闇に深く響き渡る鐘の音。

その一打一打を聴きながら、慌ただしく過ぎ去ったこの一年への感謝と、ようやく準備を終えられたという安堵感が込み上げてきました。

一年の煩悩を払い、新しい年を迎えるための神聖な響きに包まれながら眠りにつきました。

甲府盆地の絶景と法要の準備

元旦は、5時過ぎに起床し、お正月の祈祷法要を行うお寺へ向かいました。

そして、ふと本堂から外を眺めたとき、目の前に広がっていたのは太陽に照らされた美しい甲府盆地の景色でした。

冷たく澄み渡る空気の中、山々に囲まれた盆地が明るい光に包まれた様子は、まさに絶景。

「この場所で、皆様と一緒に新しい一年を歩んでいくのだ」と、改めて背筋が伸びる思いがいたしました。

甲府盆地と富士山

修正会(しゅしょうえ)に込めた願い

その後、新春最初の法要であるご祈祷「修正会」を執り行いました。

「修正会」とは、今ここで生きている我々自身について、1年の幸福を祈る内容です。(曹洞宗SOTOZEN−NETより)

お集まりくださった僧侶の皆様方の厳かな読経に、私も一緒に手を合わせました。願ったことは「お檀家様を始めとする世界の皆様が、この一年を穏やかに過ごせますように」ということです。

曹洞宗の本堂

笑顔が溢れた初めてのお茶会

法要後の「お茶会」では、お集まりいただいたお檀家様たちが私を温かく迎えてくださいました。

「掃除大変だったでしょ」という労いの言葉に続いて、「奥さん、どこ出身なの?」と気さくに声をかけてくださった皆様。その一言には、新しくお寺に来た私を歓迎してくださる優しさが溢れていました。

お寺とは単に儀式を行う場所ではなく、こうして地域の皆様と心が通い合い繋がっていく場所なのだと、深く実感いたしました。

嫁いで初めての経験ばかりの年末年始でしたが、皆様の優しさと甲府の美しい景色に救われ、素晴らしいスタートを切ることができました。 本年も、皆様にとって心安らかな、実り多き一年となるようお祈り申し上げます。