【子どもたちへ届けたい法話】泥の中でも、きれいな花をさかせる「蓮(はす)」のお話

【子どもたちへ届けたい法話】泥の中でも、きれいな花をさかせる「蓮(はす)」のお話

お寺のじかんを運営するSOCIALTEMPLEでは、山梨県甲府市内の放課後等デイサービス「こども発達支援センター コスモ・アンシアnobi-nobi」様にお伺いし、子ども達に向けて法話をお伝えする機会を定期的にいただいております。

今回は、その法話の内容を、記事として読みやすいようにリライトしたものをお届けいたします。

法話:泥があるからこそ、蓮は咲く。

私のお寺では二年ほど前から蓮を育てています。

ちょうど法話会のあった日の朝、今年最初の一輪が咲きました。まだ五分咲きくらいでしたが、それでも十分きれいで、思わず嬉しくなってしまうような花でした。

蓮の花は、写真で見たことはあっても、実物はあまり見たことがないという人も多いかもしれません。

夏の花で、だいたい今くらいの時期から七月いっぱい、長ければ八月の初めくらいまで楽しめます。お寺や池などで育てているところもありますから、機会があればぜひ見てみてほしい花です。

さて、そんなきれいな蓮の花ですが、どんなところで育つかというと、実は、澄んだきれいな水の中ではありません。

蓮は、泥のある、濁った水の中でこそ育つ花です。むしろ、きれいすぎる水ではうまく育たないとも言われています。

泥というと、なんとなく汚いもの、できれば避けたいもののように思えます。

でも、蓮にとっては、その泥こそが花を咲かせるための栄養になります。

しかも不思議なことに、蓮は泥の中で育ちながら、その花や葉に泥をまといません。葉は水をはじき、泥水の中にあっても汚れに染まらない。

だからこそ、あの花の美しさがいっそう際立つのだと思います。

お寺で蓮の花が大事にされているのは、こういうところに意味があるからです。

では、この「泥」を、私たちの生きる毎日に当てはめると何になるでしょうか。

うまくいかないこと。
嫌なことを言われること。
友だちとの関係で傷つくこと。
失敗して落ち込むこと。
欲しいものが手に入らないこと。
あるいは、自分でも嫌になるような、ずるい気持ちや意地悪な気持ち。

そういうものは、どれもできれば無い方がいいと思うものです。

私たちだって、苦しいことも嫌なこともない方がいいし、自分の中のずるさや弱さだって、できれば見たくないものです。

でも、そういうものがあるからこそ、気づけることがあります。

あの時、自分は少し嫌な言い方をしてしまったな、とか。
あの時、意地悪な気持ちが出てしまったな、とか。
あんなことを言われて嫌だったから、自分は同じことをしないようにしよう、とか。

つらいことや、うまくいかなかったことや、自分の中のあまり見たくない部分に気づくからこそ、「じゃあ次はもう少しよくしてみよう」と思えることがあります。

明日はもう少し優しくしてみようとか、同じ失敗を繰り返さないようにしようとか、そういうふうに思える。

だから、苦しいことや嫌なことを、ただ我慢しろという話ではありません。

そうではなくて、今いる場所がどんなところでも、自分の気持ちが少し荒れてしまっている時でも、周りから嫌なことを言われたりされたりした時でも、そこで終わりにせず、「じゃあ自分はどうするか」を考えていく。そうやって少しずつ、自分の心をきれいにしていく。

蓮の花は、泥の中で育ちながら、泥に染まらず、美しい花を咲かせます。

お寺や仏さまの世界で蓮が大事にされるのは、私たちもまた、そういうふうに生きていきたいからです。

仏像を見ると、多くの場合、仏さまは蓮の花の台の上に座っています。

蓮は、清らかさの象徴でもあります。でもそれは、最初から汚れのない場所にいるということではなくて、泥の中にあっても、そこに飲み込まれずに生きていくということなのだと思います。

私たちも同じです。

嫌なことを言われることもある。
自分が誰かを傷つけてしまうこともある。
自分の中に、ずるい気持ちや嫌な気持ちが出てきてしまうこともある。
「なんで自分はこんな嫌なやつなんだろう」と思うことだってあるかもしれません。

でも、そういう自分に気づいた時に、そのままで終わるのではなくて、「もう少し良い自分になってみよう」と思う。

その積み重ねが、泥の中で咲く蓮の花のように、自分を育てていくのだと思います。

つらいことや苦しいこと、うまくいかなかったことは、もちろん無いに越したことはありません。

けれど、そういう体験があったからこそ、人に優しくなれたり、自分を振り返れたり、少しずつでも良い方に変わっていけたりすることがあります。

泥があるからこそ、蓮は咲く。

そんなことを、今年最初に咲いた蓮の花を見ながら、あらためて思いました。

これから夏の間、蓮の花の季節が続きます。もしどこかで見かけることがあったら、ただ「きれいだな」と思うだけでなく、その花が泥の中から咲いていることも、少し思い出してみてください。