お寺豆知識第13回 June brideと仏前結婚式

お寺豆知識第13回 June brideと仏前結婚式

【お寺で結婚式ってできるの?】

お寺豆知識も第13回となりました。
坊主道代表、近藤玄純です。

梅雨入りし6月も半ばを過ぎました。
空梅雨なのか暑い日が続いていますね。
農作物も暑さの中で被害も出始めているようです。
皆様も体調には十分お気をつけてください。

さて今月は〝6月〟旧暦では「水無月」です。

水無月の〝無〟は接続詞の「の」に当たるそうで「水の月」となるそうです。

今月は大きな仏教行事はありませんので「June bride(ジューンブライド)」にかけてお寺でする仏前結婚式のお話ししたいと思います。


【そもそもJune brideって??】

マイナビウェディングによりますとJune brideとは古くからヨーロッパで「6月に結婚する花嫁は幸せになる」と言い伝えがあり、ギリシャ神話の絶対神ゼウスの妃であり結婚と出産を司る女神「Juno(ジュノ)」が守護する月が6月(June)であることから、この月に結婚すると生涯幸せに暮らせるとの由縁があるようです。
また日本では梅雨に当たりますが海外では乾季に当たるためなんて話もあります。
バレンタインデーやクリスマスとも似ている〝何か〟を感じてしまいます(笑)
※諸説あります。

日本においての「結婚」も時代とともに変化してきました。

古代には制度としての「結婚」はなく比較的〝自由〟な男女の結びつきであったようです。
コミュニティに各個人の経済活動の互助作用が働いていたため緩い結びつきでの家族(集落自体が家族)で生活を維持できていたのです。

そして「律令制」の導入とともに「家父長制」が広まりながら男性優位の社会作りが始まっていきます。

中世・近世での結婚制度は経済的理由と血統を残すために行われている側面がありました。
武家社会においてはその「家」に家禄と呼ばれる給料が支給されていました。

また産業が農業を中心とした江戸時代には女性は貴重な労働力で共働きは当たり前でした。
その面からも「家」にまた男系に血もお金も統合していくことはその時代においては合理的だったのかもしれません。

離婚に関しても幕府公認の「駆け込み寺」の存在からもわかるようにお寺も婚姻関係にも深く関係していました。
「三行半」なんて話もありますが現代に生きる私たちのイメージとはずいぶん違うようです。

※「駆け込み寺」については鎌倉東慶寺を舞台にしたこちらの映画、『駆け込み女と駆け出し男』をご覧ください。
ちなみに鎌倉東慶寺には坊主道の研修会の際お参りしました。

近代に入り「家」は法制度化されます。

「明治民法」にはその「家父長制」が強化され、「家」は会社化され家長が絶対的権限を持ち家族がどう配置されるかを決定していました。

現代においては「恋愛結婚」が大半を占めるようになり〝人間的結びつき〟により結婚をするようになっています。

時代の流れの中において男性優位社会の結婚の是非は別として、こういった流れが現代の「結婚」に繋がっています。

このことから考えると「結婚」とはその時代背景が大きく影響するのだということがよく分かります。

単身率が人口の半分近くに近づきつつある現代においてはこれからも「結婚」が変化し続けていくことが容易に予測できますね。

もう1つお坊さん的に考えると「結婚」と「お墓」は表裏で現在のお墓の問題にも大きく繋がっています。
この問題については長くなるので次回に回したいと思います。

いずれにせよ新たな門出に立つ二人には幸せになっていただきたいと思います。

【現代の結婚式の種類】

日本において結婚式にもいくつかの種類があります。
大まかには4つに大別されるようです。

神前式

神殿にて行いお祀りされた神様の前で誓いを立て挙式します。
私も参列したことがありますが伝統的スタイルで神主さんが祝詞(のりと)を読み三三九度などを厳粛な空気の中で行います。

キリスト教式

教会などでキリスト教の神様の前で誓いを立て挙式します。
現在はこの形が多いように感じます。
ウエディングドレスを着た新婦がバージンロードを歩く姿はとてもスタイリッシュですね。

人前式

二人の婚姻を立会人が証人となり誓いを立てて挙式するスタイルです。
最近出てきたスタイルで宗教性はほとんどありません。
近親者や友人とともに作り上げる結婚式なので自由度が高く作り上げたことが心に残る結婚式ですね。

そして最後に

仏前式

これは次の章にてお話しします。

【仏前結婚式とは?】

お寺で結婚式ってできるの?

お葬式や法事のイメージが強い!

そんな言葉をよく耳にします。

答えは、お寺で結婚式ってできるんです!!

私はお坊さんですので当然仏前結婚式でしたが、お坊さん以外の方も行うこともできますし、実際に選択される方も多くいます。


お寺の本堂にて御本尊様の前で二人の結婚を誓います。


式の執行をするお坊さんがお経を読み、仏様に二人の幸せをお祈りします。

三三九度と親族固めの杯をし〝夫婦和合〟を列席者とともに祈り二人の門出を祝します。

雅楽の調べとお経が聞こえてくる結婚式です。
みなさんイメージできますか?

指輪交換もしますがお坊さんからのお数珠の授与、もしくは交換します。

そのお数珠は信仰の証として生涯二人で持つこととなります。

仏様の慈悲の眼差しの中で二人の将来を誓い合う、これもまた結縁ですね。

仏前結婚式に興味のある方は施設の問題もありますが皆様の菩提寺でも地域のお寺でもお聞きになってみてください。

【偕老同穴(かいろうどうけつ)の誓いと三世の因縁(さんぜのいんねん)】

みなさん、海に生息する「カイロウドウケツ」という海綿をご存知でしょうか?
「カイロウドウケツ」は深海に生息する5センチから20センチほどの海綿の仲間です。
駿河湾や相模湾に生息し海綿にくっつきプランクトンを食べて生息しています。
その「カイロウドウケツ」の中には『ドウケツエビ』と呼ばれる透明なエビが住んでいます。
『ドウケツエビ』はなぜか「カイロウドウケツ」を住処とし、夫婦のつがいで一夫婦だけが住んでいます。
小さいうちに住み着き、死ぬまで出られなくなるそうです。

「偕老同穴」という慣用句があります。
その意味は、「共に老い、同じ墓に入る」という夫婦の結束と絆を表す言葉です。
同じ家に住み苦楽を共にし、最後まで一緒にいる、ということを誓い合う絆はまさに結婚そのものです。

この故事は現代に生きる皆様の中には違和感を覚える方もいるかもしれません。
しかし「選択」と「決断」。
これもまたその人の生き方です。

また仏教では「三世(さんぜ)」と「因縁」を説きます。

全ての事柄には原因があり結果がある。
「因縁果報(いんねんかほう)」、「因果応報(いんがおうほう)」とはここから来ています。

私たちの命は、過去世(かこせ)・今世(こんぜ)・来世(らいせ)の三世からなり過去世の因縁を以って今世に生まれる。

今世出会った二人は過去世の深い因縁を以って結ばれる。

そしてどんな形かは分かりませんが来世も。。。

たまたま出会っている訳ではありません。

夫も妻も親も子も友人も同僚も。

その「縁」を踏まえて皆様の周りにいる方を再確認してみてはいかがでしょうか?