お寺に泊まったことはありますか?

お寺に泊まったことはありますか?

【お寺に泊まったことはありますか?】

お寺に泊まったことはありますか?

宿泊施設のあるお寺=宿坊

皆さまは宿坊には、どのようなイメージをお持ちですか?

「泊まれるお寺」

それが、漠然とした宿坊のイメージだと思います。

私は、一年間ほど、毎月のように身延山の宿坊に泊まり、その後、一時は住み込みをしながら、一年間足らずですが、お手伝いに通っていました。

長年宿坊で働いておられる方々には申し訳ない程、語る事すら許されない程、微々たる経験です。
しかし、私なりに感じた事を、あくまで個人の意見として、皆さまにお伝え出来ればと思いました。

【宿坊ってどういうところ?】

宿坊は、お寺に住んでいる住職の家族と、お手伝いをして下さる「おばちゃん」方、身延山関連の学生さん方で構成されています。

皆でお布団の上げ下げ、お部屋、トイレ、お風呂等々のお掃除、食事の準備、御膳の上げ下げ、全て行います。
民宿のようなものです。

宿坊には、旅館のような施設はありませんし、各部屋の仕切りは襖である事がほとんどで、アメニティもありません。トイレもお風呂も共同です。テレビもない宿坊もあります。

宿坊にもよりますが、フェイスタオル と歯ブラシセットは用意してあってもドライヤーは用意されていない事が多いですし、バスタオルも基本的には用意されていないと思います(身延山の場合)。
もしフェイスタオル 、歯ブラシセットがある坊でも、無駄を出さないために持参するのが望ましいと思います。

【お寺に泊まるということ】

私は、お参りの為に宿坊に宿泊していた頃は、フェイスタオルサイズのタオルは3枚以上用意して行っていました。
1枚は顔や手を拭くため。
2枚目は体を洗うため。
3枚目以上は掃除のために。

顔を洗ったり、手を洗ったりすると、洗面台の周りに水滴が飛んでしまいます。

これをこのままにしたら、どうなるか。

自分が好きで泊めさせていただいている坊の寺族の方に掃除をしていただいてしまうことになります。
私は、それは恥ずかしいし、申し訳ないと感じていました。

実際に宿坊を手伝う側になり、実感しました。

宿泊の方が帰られた後の洗面所は大抵いつもビショビショでしたし、お手洗いも、綺麗とは言えない状態の事が多かったのです。

そして、それを、御住職の奥様や寺族の方が汗を流しながら掃除していました。

「掃除する事が修行のひとつ」

という考えももちろん出来ますし、私もそう思いながらお手伝いをさせていただいていました。
私がお手伝いさせていただいていた範囲では、それに不満を漏らす人もいませんでした。

しかし、私はふと思うこともありました。

「身延山に何をしに来たのか。何を求めて来たのだろうか」

「観光。ただそれだけ。」
ならば、仕方がないかも知れません。

【お寺は旅館!?】

しかし、目的が「お参り」であるならば、是非今一度我が身を振り返ってみていただけたらと思います。

身延山にお参りに来て、自分は身延に何を残すのか。

昔は宿坊に泊まることを参籠(さんろう)といい、お寺に泊まるその時間は自らの修行の時間でした。

今も宿泊の方がある事を、宿坊では参籠があると言ったりしますが、実際はどうでしょうか。

散らかしっぱなし、汚しっぱなしにしてはいませんか?
自分が汚してしまったその場所を掃除して下さっているのは、宿坊の御住職かも知れません。

宿坊で働いてる方々は、皆、御参拝の皆さまに気持ち良くお参りをしていただけたらと早朝から深夜まで一生懸命働いています。

遠くから御参拝の方に、宿坊でホッとひといきついていただきたい。
そう思っています。

そのような方々に、恥ずかしくない自分であるか。

 

身延山で時間を過ごすという事は、自分を見つめ直す事だと私は思っています。
身延山へ来て、何を得るか。

それは自分次第です。
お食事をいただくときも、命に感謝して召し上がってみてください。

宿坊で、とあるクレームがあったといいます。
「朝4時から隣室がうるさい」。

お隣のお部屋の方は、久遠寺の朝のお勤めに行かれるお支度をされていたそうです。
大きな声を出していたわけではありませんが、宿坊は部屋の仕切りが襖のため、わずかな音でも響きやすいのです。

お疲れの方、体調の優れない方もいらっしゃることと思いますので、朝早く物音で起きてしまうのはつらい場合もありますが、身延山の朝勤は大切なお勤めです。余程騒いでいる等という場合でない限り、どうかご理解下さい。

そして、もしよろしければ、宿坊に泊まられた方には身延山の大切な朝のお勤めにも是非参加していただけたらと思います。

【日常生活とは異なる空気感を】

宿坊は万事が普通の旅館とは異なります。
早朝から身延山内では団扇太鼓(うちわだいこ)の音が鳴り響く事もあります。

環境を自分に合わせるのではなく、長い歴史の中で受け継がれて来た様々な物事から形成されている身延山という環境に、寄り添ってみてください。

便利なものに囲まれ、ある程度は自分で作り出せる環境の快適さに慣れた自分の「余分なもの」を一時でも、取り払う経験をするのも何かの気付きになることもあると思います。

宿坊は泊まれるお寺。
そして、お寺であるということは、そこに生活される方々もいらっしゃるという事です。

それぞれに特徴や空気感が違います。
是非、色々な宿坊に泊まって、自分のお気に入りの場所を見つけていただけたらと思います。

難しい事を書きましたが、最初の一歩は誰しもがわからなくて当たり前です!
それにいちいち目くじらをたてる宿坊はありません。
ご住職を始め、従事されている方々が優しくご対応してくれます。

わからない事があれば、是非各宿坊にお問い合わせ下さい。

まずは気軽に「はじめの一歩」を踏み出していただけたらと思います!
そして、宿坊の良さに気付いていただけたら幸いです。