お坊さんが教える「マインドフルネス」講座体験記

お坊さんが教える「マインドフルネス」講座体験記

「お坊さんの教えるマインドフルネス講座」

平成29年6月12日、超宗派のお坊さんで構成する勉強会グループ、「坊主道」主催の「お坊さんの教えるマインドフルネス講座」に参加してきました。

この日、会場は善光寺の檀信徒会館でした。
この善光寺の「檀信徒会館」は檀家さんが法事や葬儀を行う会館だそうです。
善光寺の金堂へ入ったことはあっても、檀信徒会館は初めてです。
実のところ少しばかり緊張していましたが、会館の扉をあけると、受付には数名のご住職。
坊主道メンバーの面々です。
みなさん、お坊さん的貫禄が有りながら、優しい笑みの方や、生真面目そうな、いかにもの方…そして近藤代表が出迎えてくれました。 緊張もほぐれて、気がつくと私の好きなお線香が微かに香っていました。

張り切って来たので到着が早すぎたようで、まだ会館はほぼ空席。
ところで、どれ程参加者は来られるだろうか。折角なので、たくさん来られないととても 寂しい、なんて考えていました。
どうしてかというと、私はお寺で開催されるイベントというものに参加することが初めてでした。

【マインドフルネスって何?】

各地でこのようなお寺のイベントが行われていることすら、近藤代表に聞くまで は知りませんでした。

ですが集まった人数は約70 名、満員。相変わらずのユーモラスな渡辺副代表の司会から始まり、みなさんは、心ぽかぽか。これで私は心が踊ってきたところで、講座が始まりました。

講師は栃木県にある浄土宗光琳寺の副住職、井上広法さんです。早速、動画がスクリーンに流れます。 フォーカスが当たるのはビジネスパーソンの悩み。
例えば、やるべきことに集中できない、イライラして感情的になってしまう、上手くいかない職場の人間関係、など。

このような課題を解決するひとつの手段として「マインドフルネス」を行おうというのです。
この日常的な「悩み」が「マインドフルネス」とどう繋がるのか、ワクワクして来ました。
「マインドフルネス」とは、今やっていることに意識を集中し、思考を阻害する他の考えが浮かんで来てもそこに意識を向けないこと。
これがストレスの軽減や、生産性向上に役立つのだそうです。
『Google』、『Intel』、『Facebook』、『Goldman Sachs』 などのグローバル企業が、「マインドフルネス」 を社員教育プログラムとして導入しているとのことです。
私にとって未知であるマインドフルネスってすごいかもしれない…、ますます期待に胸が 膨らんで来ました。
「マインドフルネス」を生活で実践している著名人も数多く知られているそうで、中でも私がファンであるハリウッド俳優のリチャード・ギアもその一人で、単純な私は「マインドフルネス」をぐんと身近に感じました。
(ついつい、リチャード・ギアの ことも身近に感じました。)

【本日の講師、井上広法さん】

井上広法さんは、お坊さんとして多岐に渡る活動をされています。


お坊さんに相談ができるQ&A ウェブサービス「hasunoha」や、テレビ朝日系列で放送さ れたお坊さんバラエティ番組「ぶっちゃけ寺」など本当に幅広く活動されています。
井上広法さん曰く、お名前の「広法」は「法(仏教)を広める(布教する)」と書く名のさながら、そのような活動をされていると仰っていました。
その井上広法さんの経歴はとても興味深く、佛教大学を卒業後に、東京学芸大学で学び直されたそうです。
臨床心理学を専攻されたそうで、仏教を伝える時に、この学問を絡めて解説をされていました。

これは「科学×仏教」で仏教の話題に、科学的研究の結果など交え、合理性を明らかにしながら話を進められていることがとても印象的でした。
この思考姿勢が私には新鮮で、今までは、「神聖な哲学的なもの…?」
「お経も何を言っているのか、どんな意味なのか判らないな…」という印象だった仏教はすっかり関心の対象に変わりました。(ゆくゆくは、お経も理解したいと思っています。)

そして「マインドフルネス」の話題へ、例えば「人間が一日のうちに〝心ここにあらず〟 の状態の時間はどのくらいあるでしょう?」という質問。
我々は一日のうちの50%が〝心 ここにあらず〟の状態でいるそうです。

次に、「人間の集中力の持続時間は?」という質問です。
これは、30 分程かと予想したのですが、答えは、2012 年時点で12 秒。
更に、2015 年時点になると8 秒といった研究結果が出ているそうで、これは金魚の集中力持続時間が9 秒であり、金魚を下回ったとの話でした。
これには驚きよりも、思わず笑ってしまいました。

井上広法さんがその理由に挙げたのは、スマートフォンの普及です。
私も、スマートフォンを持ってから、脳を動かすことが少なからず、減っていると感じており葛藤するときがありました。
社会全体を見ても、大きな影響があるのでしょう。

集中力の話題から続きます。

眼鏡メーカー「JINS」より現在販売されている眼鏡「JINS MEME」
私は最初、MEME を、めめ、と読んだのですが、正しくはミームと読みます。
この眼鏡は特殊な機能をもっており、センサーで把握した、まばたきや体の動きから集中 力を測り、アプリに計測結果が反映され、アドバイスをしてくれます。
集中力向上に向けたマインドフルネストレーニングを行える機能もあり、通常わかりにく いメンタルの状況を数値にして可視化できるようになります。
井上広法さんは、「心の状況 が可視化できたところで終わりではならず、トレーニングを行い、集中力を上げ、生産性向上に繋げることが重要だ」と語っていました。

「マインドフルネス」とはなにか?
「マインドフルネス」といわれても、明確なイメージや詳細な行動は知らずに来ました。
「マインドフルネス」は仏教用語で「正念」であり、瞑想。「いま、ここ」に意識を向けることであり、「いま、ここ」とはつまり何なのかというと、 井上広法さんは「現実に意識を向け続けて、あるがままに受け取る、それに対する判断や 思考に囚われないこと」であるといいます。
この段階でまだ私の中では、理解できそうで実態をつかみにくい「マインドフルネス」。

講師の井上広法さんはそんな私たちにいくつかの体験を交えながら分かりやすい解説が進んでいきました。

【レーズンエクササイズと〝ジブン〟のココロの調え方】

三分かけてレーズン一粒を食べる「レーズンエクササイズ」 脳の中で号令を出して「噛む」。 閉じた歯を開ける時も、号令を出す。
そして食べる時にする行為、「噛む」を〝意図〟しながら食べる。

食べていることにのみに集中します。 井上広法さんは「食べるときの心の向き合い方を変えることで、足ることを知ることができる」と仰っていました。
戦後の物がない状況から現在は飽食の時代と呼ばれ、食べ物を粗末にしがちな日本人の現状に警鐘を鳴らされており、私自身も危惧していた事なのでと ても心に響きました。
そのためレーズンエクササイズでの体験では、改めて「足ることを知る」大切さが身に染みました。

・鐘の音が消えたら挙手をする「鐘の音 集中」 法事などで打つ鐘の音(引磬、いんきん)に集中し、これ以外の事を考えずに音が鳴り終わったら挙手をします。
私はこの体験で、「耳の聞こえに自信がないから不安だ」、「この体験にはなにか裏の意図があるのか」など、ついつい雑念が生じてしまいました。
散々な結果です。

・最後に、マインドフルネスの根幹である「瞑想」です。
瞑想で重要な要素である3 つ「調身・調息・調心」 調身→姿勢を正しく整える 調息→腹式呼吸。
息を調える。

調心→「いま、ここ」に集中する。心を調える。
瞑想は、姿勢を正し、落ち着いて呼吸をし、呼吸が整って、心が安定する、といった身体的な原理が元となる教えです。

井上広法さんは「鼻から息を吸い、呼吸をしていることに全神経を集中し、〝吸う〟、〝 吐く〟に意識を向けるように」とアドバイスをいただきました。
そして、他の考えが浮かんできたら再び〝呼吸〟を整え、〝呼吸〟に意識を集中します。

今回の講座で現在、「マインドフルネス」が社会で受け入れ始められている理由の一端が分かったような気がしました。
生活に取り入れ、内面はどのような変化が起こるのだろうか と興味を持ちました。

特に「レーズンエクササイズ」の体験は、毎日の行事である食事の行為の中で取り入れられる瞑想です。

まずは、入口として、ここから実践し、これを大切だと思う〝自分〟の本質的な部分に向き合いたいと思いました。

普段何気無く生活し、野放しになっている「心」に意識を向けて生活していきながら「心 のトレーニング」を始めたいと考えています。