ご利益寺を巡ろう!日本最古の「山高神代桜」が咲き誇る「大津山 實相寺」のご利益とは

ご利益寺を巡ろう!日本最古の「山高神代桜」が咲き誇る「大津山 實相寺」のご利益とは

2000年間、ずっと花を咲かせてきた山高神代桜があるお寺

 

国道20号を白州方面に進んでいくと「神代桜」という看板が見えてきます。

神代桜」は日本三大桜のひとつで、日本武尊(やまとたけるのみこと)が植えたとされる桜の木です。

 

この「神代桜」を保有しているのが「大津山 實相寺(じっそうじ)」なのです。

 

   ▲真言宗から日蓮宗に変わった實相寺

 

 

實相寺は、もともとは真言宗のお寺だったそうですが、640年ほど前の永和元年、實相院日応上人が、このお寺の住職と法義を論じ、論破して譲り受け、日蓮宗に改宗したと言われているそうです。

 

その後、永禄4年(1561年)川中島の合戦の時、武田信玄が武運長久の祈願所として、一条次郎忠頼の城跡を寄進、移転して今に至るそうです。

▲日蓮聖人もこの場所を訪れたそうです

 

實相とは、お経の中の言葉で、実際の姿という意味を持っているそう。

 

實相寺の実際の姿というと…

 

二度の火災(一回は200年前の江戸時代)により、歴史的建造物や寺宝等、お寺としての姿はほぼ焼失してしまったそうです。

しかし、唯一火災から免れたものが「神代桜」でした。

 

 

その奇跡の一本は、樹齢約2000年と言われていて、岐阜県本巣市の「根尾谷淡墨ザクラ」、福島県三春町の「三春滝ザクラ」と一緒に「日本三大桜」と呼ばれています。

その3本の中でも、實相寺の「神代桜」が一番古いとか。。。

日蓮聖人の時代には、すでに木の衰えがあったと言われているので、ものすごく古い桜ということが分かりますね。

 

▲樹齢2000年の「神代桜」

 

2000年、一度も欠くことがなく咲き誇る桜の「生きる力」

 

その日蓮聖人が、桜の木の衰えている姿を見て回復を祈願すると…

再び蘇ったと伝えられ「妙法桜」とも呼ばれている「神代桜」は、大正11年10月に国指定の天然記念物に指定されたエドヒガンの古木です。

 

根回りは13.5mの太さで、根元はコブのようにゴツゴツしていて、命のエネルギーが周辺に満ちているようにも感じます。

 

ご住職の松永直樹さんも「長い年月を生きてきた、この「神代桜」の前に立つと、私たち人間に何か不思議な力を与えてくれるような感じがします」と言います。

 

▲31世住職・松永直樹さん

 

手を合わせるとご利益がある神代桜

 

「神代桜」に手を合わせると、「願いが叶う」、「気」をいただけたと言う声が多く、中には10年間も病院通いをしていた方が「神代桜」に会ってからすっかり元気になったとかで、『病気』『長寿』の桜として親しまれています。

 

ご住職は「太古の時代から永遠に続いてきた桜の力、強い生命にいつしか魂が宿り、多くの心を癒してきたのです。今もご神木として信仰の対象とする人が後を絶ちません。私たちに与えてくれるのは花の美しさだけではなく、懸命に生きる力とその尊さ。みなそこに美を感じ、感動するのだと思います」。

 

ご住職がそう言う通り、桜が咲く季節になるとこの周辺は県外ナンバーの車が多く見られ、道路は渋滞が発生するほど混雑します。

 

それもすべて、この「神代桜」をひと目見ようと集まってくるからです。

神代桜の前でじっと佇む人。

手を合わせる人。

花びらをそっとポケットに忍ばせる人。

 

多くの人がそれぞれの想いを「神代桜」に込めます。

 

 

▲ピンクと青のコントラストが美しいですね

 

 

美しい景色が広がり「花の寺」とも呼ばれる實相寺

 

別名「花の寺」と呼ばれている實相寺。

境内に入ると、まず目の前には10万株の水仙が広がっています。

▲山門をくぐると…

 

▲約10万株の水仙が咲き誇ります。後方には南アルプスの山々が望めます

 

桜のアーチをくぐり抜けると本堂があり、外の賑やかさとは打ってかわり、神聖な空気が流れています。

 

天井には、当時の祭りの風景などが描かれていますが、こちらは江戸時代に一度焼失しているので、明治時代頃の絵だそう。

 

▲本堂では寄贈された「神代桜」の絵画を見ることができます

▲明治37年頃の天井絵だそう

宇宙を旅してきた種から発芽した「宇宙桜」など有数の桜の木を保有

 

「神代桜」以外にも約30本の桜の木がある實相寺ですが、この中には「根尾谷淡墨ザクラ」、「三春滝ザクラ」をはじめ、全国で有名な桜の子桜が植えられているんです。

 

▲「臥竜桜」の子桜

 

 ▲「神代桜」の子桜もあります

 

特にアメリカのNASAからスペースシャトルに乗って宇宙に飛び立った「神代桜」の種から成長した樹木は、希少価値の高い1本ではないでしょうか。

約8ヶ月間、無重力の中で過ごし、若田光一さんの手によって地球に帰還した種は、種子をすべて植えたところ2粒発芽したそう。その1つが實相寺の境内にあります。

 

▲「宇宙桜」

珍しいことに、通常花びらは5枚だそうですが6枚ある花びらがあるそうです。

 

「神代桜」を守る一大プロジェクト!

 

「神代桜」の傷みは年々激しくなり、主幹は地上3mから途中で折れ、他の枝も風雪等で折れ、太い枝は1本を残すのみ。太い幹は空洞になっていて9割が腐敗しているそう。周りを支柱で支えられ、なんとか現在もその姿を見れるギリギリの状態です。

 

▲2000年生き続けている証です

「村の大切な桜。なんとかしないといけない」。平成7年、旧武川村教育長に就任した一木正喬(いちぎまさたか)さんは、こう言い「神代桜」の回復を国や県に働きかけました。

 

車の排気ガスや震動から守る計画をはじめ、樹木医による回復工事。ときには、地元の子どもたちを集め写生大会をさせるなど後世に繋げていくことも行い、一木さんは尽力したそうです。

残念なことに志半ばにして、急逝してしまった一木さんですが、奇しくも天に旅立った翌日、「神代桜」は開花したそうです。

 

そんな一木さんやご住職をはじめ、この場所に当たり前のように鎮座している「神代桜」と一緒に育った人々の願いは、今もプロジェクトとして受け継がれています。

 

▲ご住職も「神代桜」に登って育った一人です

 

▲お孫さんのはるみちくん。33世として實相寺を継ぐ頃、「神代桜」はどのようになっているのでしょうか

 

2000年。気が遠くなる時間をずっと過ごし、1年に1回見事な花を咲かせている「神代桜」。

身体はボロボロでも、懸命に生きていることを主張するように花をつけます。

 

それは、人の生きる姿に似ているようです。一点の曇りもなく誇らしげに咲く桜。

散っていく花にも「美と生」を感じることができる實相寺でした。

▲訪れた4月1日は新しい時代が「令和」と発表された日でした

 

大津山 實相寺

山梨県北杜市武川町山高2763

0551-26-2740

 

大津山 實相寺