第7回【あなたの街のお寺さんぽ】南アルプス市・法源寺
27世住職、横山瑞法さんを訪ねて
「おはようございます」「今日は良いお天気ですね」
朝の7時前になるとポツリポツリと人が集まり出し、そんな言葉が境内に響きます。本堂で始まる読経の後、草取りをしたり窓を拭いたりと訪れた人はみんなで掃除をし、清らかな空気の中、ゆっくりと朝のお茶をいただく…。
南アルプス市にある日蓮宗弘経山法源寺の横山瑞法住職が、この活動「テンプルモーニング」を始めたのは2017年のこと。
現在では、住職への取材依頼やお寺への問い合わせも増えていると言います。
27世・横山瑞法住職、37歳。そんな彼のこれまで、そしてこれからの事について話を伺ってきました。
▲法源寺の現住職、横山瑞法さん
父のお手伝いを始めたのは高校生の時
祖父、父親が住職をしている家の長男として生まれた横山瑞法さん。
幼い頃から当たり前のようにお寺があり、仏教の教えがある環境で育ちました。
「祖父がこのお寺の住職をしていて、父は隣の地区にあるお寺の住職を務めていました。
私が小学校低学年の頃、父が2つのお寺を兼務することになり、私たち家族もこの場所へ引っ越してきました。
思春期の頃は、“お寺の息子”であることを恥ずかしく思ったりもしました。
俺はお坊さんになんて絶対にならない!と思っていたものです。
そう思いながらも、お盆は父の手伝いをするのが自然なことでもありました」
▲清掃の行き届いた美しい境内
▲本堂もとても美しいです
▲横山さん自身小さな時にとても怖かったと話す「鬼子母尊神」も本堂にあります
そう話す横山さんは、若かった頃の自分を思い出し恥ずかしそうに笑います。
同県に総本山のある日蓮宗。法源寺からは車で約1時間という環境にありながら、横山さんは都内の大学へ進学。
就職活動を意識し始めた頃、父親から将来についての話があったと言います。
「お坊さんにならないか?」
ハッキリとそう言われたことで、横山さんは決意を固めることができたそう。
その後すぐに、仏教を学べる大学へ編入。
卒業後は、地元に戻り日蓮宗の総本山久遠寺に修行へ出ました。
勘違いしないこと
副住職として父親であるご住職に学びながら、就職もした横山さん。
皆さんと同じように働かせてもらい、人々の暮らしに馴染むことで気づいたものも多いと話します。
「世の中は、目まぐるしく変化を続け、新しいものには注目が集まります。
しかし、私たちのように仏教、お寺、お坊さんというずっと変わらないものの在り方とは?そう考えるきっかけをもらえました」
どんな時でも謙虚な気持ちを忘れない横山さんの言葉は、父親である前住職からずっと言われ続けてきたことにあるそう。
「“勘違いするな”父はことあること毎にそう言いました。
周りの人に助けられているから私たちがいること。
それは態度や言葉に限らず、境内を綺麗にし、法衣をはじめ身の回りを整える。
いつどんな時でも皆さまが安らげる場所であることが地域に根付くお寺の役目なのだと」
2017年に住職となった横山さんは、このことを念頭におきながら活動を続けています。
▲法源寺に携わる方々が残してくれた昔の記録も大切に残しています。
当たり前に存在することの価値
先に話した「テンプルモーニング」を始め、横山さんは様々な活動を続けています。
共通していることは、そのどれもが特別ではないということ。
▲「テンプルモーニング」は、どなたでも参加できます
・毎月1〜2回行われる「モーニングテンプル」
・春のお祭り「花まつり」
・年末年始の「除夜の鐘」、その後に行う「祈祷会」
・宗派の違う若手僧侶「坊主道」のメンバーとしての活動
・「坊主道」と僧侶以外のグループや個人が社会貢献活動を行う「SOCIAL TEMPLE 」のメンバーとしての活動
▲小さな子どもたちも集まる場所になってきました
▲春には「花まつり」が行われます
▲「祈祷会」にも毎年多くの人が参加します
「特別な準備がなくても実践できるいわゆる“当たり前のこと“を丁寧に行うようにしています。
テンプルモーニングの存在を知って、すぐに実践したのも同じ理由から。
当たり前をどう映すのか。それが私のできることなのではないかな?と感じています。
いつ訪れても同じように存在するお寺があって、その中には当たり前のように安らぎが存在している…。
その当たり前の価値に気づくツールとして私の活動があるように思うのです。
だからこそ、難しいことはしない。
過去に学んだことを今や未来に活かせるようにしたい、そう思っています」
広く手入れの行き届いた境内には、「豊教育発祥の地」の石碑。
かつて、この地区の小学校は、この地からスタートしたと言われています。
横山さんは今後、「豊かな暮らし」「教育」そういった視点からの活動も視野に入れていると言います。
▲境内にある「豊教育発祥の地」
そして、最後に「SOCIAL TEMPLE」についてこんな言葉を残してくれました。
「通常であればその世界の事しか知り得ないことが多いですが、ここでは、学生やクリエイター、異業種の方々が同じ時間を共有しています。
全てが学びであるのです。
多くの人が携わるので、もちろん役割へのプレッシャーも大きいですが、学ぶ事の方が遥かに多いです」
日蓮宗 弘経山 法源寺
山梨県南アルプス市十五所110
055-282-4579