【宿坊2.0】生まれ変わるお寺 Vol.2|宿坊 善光寺 TEMPLE HOTEL TAKAYAMA ZENKOJI
女性社長だからこそのこだわり。
住職とお寺ステイとの決断からは早かった。
高山という土地柄、あの善光寺が再興するぞ、と聞きつけた数多くの有志たちが集い、再興までのプランを練っていった。
今までは本堂で雑魚寝をしたり、個室部屋ではなく、いわゆるゲストハウスのような形で、1つの部屋に複数組の方々が入り混じり宿泊する形態となっていた。
だが、これからは違う。お寺ステイが入ることによって、それは一新される。
その中でも特に重要なのが、「水回り」「浴室」である。
お寺ステイは女性2名の共同代表によって、創業された。女性だからこそ気になるのがこの2点である。
宿泊をする上で、非常に重要なのがこの2点であり、今回お寺ステイとして設計したペルソナの方々にご宿泊いただくためには、なによりここに力を入れなければならない。
いままで手を付けられていなかった空間が数多くあるこの善光寺。
手を加え、新たな息吹を注ぎ込む前に、これまで紡いできた歴史に敬意を払い、いまこうして我々がこの地にたくさんの方々を呼び込む機会を与えてくれたことに感謝しなければならない。そういった気持ちを込め、まずは清掃、整理整頓である。
日本には古来から「モノ」に魂が宿るとされる。この地で、いまここに存在する「モノ」にも魂が宿っている。これから我々がこの地で、このお寺にたくさんの方々に来ていただくために、礼節をわきまえ、今後の発展を願いながら、誠心誠意気持ちを込めて、きれいにさせていただいた。
新たな息吹。そして、光。
設計も終わり、夢と期待に胸が膨らむ中、着々と工事は進んでいく。
工事が始まればあっという間である。
そして、お寺に注がれてきた歴史の上に、ついに我々の想いがのせられた。
特にこだわった水回り。お寺というとどうも古めかしいイメージになってしまう。それは、歴史があるからこそなのではあるが、水回りは経年劣化が目立つと清潔さを失ってしまう。それがもしかするとお寺への行きづらさ、過ごしづらさの一つになっているのかもしれない。そうしたことが起こらぬよう、快適に過ごしていただけるように、このような空間を創り上げた。
あの荒れ放題だった庭も、見違えた。こうして薄暗くあまり寄り付きにくいお寺となってしまっていたこの善光寺に、新たな光が差し込んでいくのである。
この瞬間を誰よりも待ちわびていた存在。
お寺を流れる空気ががらっと変わった。前の姿を知る人は、みなそう感じていた。お寺が持つ場の力、そして、その空気。言葉で言い表すことが難しいものであるが、あきらかに違う。
そして、この瞬間に感動すら覚えたのが、住職一家だ。このような姿に生まれ変わるとは想像し得なかったに違いない。しかし、住職以上にこの瞬間を待ちわびていた存在があった。
それは僧侶ではない、私達でも感じることができた。そう。この高山善光寺のご本尊、阿弥陀様だ。
もともと僧侶でもなければ、浄土宗であるわけでもない我々ではあるが、この瞬間なんとも言えない空気が漂っていた。
やはりお寺には力がある。この阿弥陀様の「御加護」をいただき、この宿坊を守り、そして発展させていく。
各地のお寺がその役割を担い、何百年とお寺を存続させ、バトンを渡し続けていることを考えると、頭が上がらない。
我々も心してこのお寺の歴史を紡いでいこう。
次代へと歴史を紡いでいこう。
そう決めた我々であった。