【宿坊2.0】生まれ変わるお寺 Vol.3|宿坊 善光寺 TEMPLE HOTEL TAKAYAMA ZENKOJI

【宿坊2.0】生まれ変わるお寺 Vol.3|宿坊 善光寺 TEMPLE HOTEL TAKAYAMA ZENKOJI

待ちに待った新装、営業再開・旅行者の動向の変化

 

2017年7月某日。

内装の一新も無事に終わり、ついに待ちに待った日が来た。

 

このリニューアルでは、いままで本堂での雑魚寝など、

ゲストハウスのような形態での運営を一新し、3つの個室を用意することにした。

一昔前は団体旅行が主流であり、相部屋での抵抗も少なかったかもしれません。

 

しかし、いまはFIT(Free Individual(Independent)Traveler)

つまり、「個人で手配し、海外を自由に旅行する旅行者(個人旅行者)」が

圧倒的に増えてきている。(もちろん国内でも)

インターネットの普及により、航空券のチケットもOTA(Online Travel Agent 例:Expediaや楽天トラベルなど)を利用し、自らで手配できるようになっている。

そして、宿泊する宿も自分自身で旅程を組み、予約する。

そうなると、プライバシーの確保とセキュリティが重要となる。

そのための個室への転換であった。

 

従来のお寺はよくいえば開放的であり、広い。

そして、全体のつくりが団体仕様である。

そのままの仕様ではどうしても現代のニーズと合わないことも多く、自由度が少ない施設は利用がはばかられてしまう。

善光寺はもともとの構造が区切りやすく、この転換が非常にしやすかったのである。

 

見事な池庭とコミュニケーションを促すラウンジ

もともとの構造をうまく活用し、一新した3つの部屋。

「花見の間」「雪見の間」「風見の間」。

これらの部屋は、池庭を一望することができ、よりゆったりとした時間を過ごす一助を担っている。

この池庭は、浄土宗独特の教えである「二河白道」の喩を再現した庭園だそう。

※現世と極楽浄土の世界の間に燃え盛る火の河と激流の水の河があって、
人はそこを通ることができないが「南無阿弥陀仏」と信じ唱えることによって一筋の白道が現れ、それを通って浄土に到達できるという信心を喩えたもので主に絵図や掛け軸にして教えを説いたもの

 

 

夜はライトアップされ、高山市の街中に位置する善光寺ではあるが、

喧騒を離れることができ、時の流れを肌で感じることができる。

 

そして、お寺に足を運んでくれる方々が宿坊を通して増えていくことはもちろんなのであるが、このお寺での滞在時間や交流人口も重要なものだと思っている。

 

その「時間」と「交流」を生むためにラウンジを設けた。

ここで、ゲストとのコミュニケーション、そしてゲスト同士のコミュニケーションが生まれる。

 

ここでゲスト同士のコミュニケーションが生まれ、

そして、善光寺のスタッフとのコミュニケーションが生まれる。

 

「おすすめのレストランある?」

「明日白川郷へ行こうと思っているんだけど、チケットどこで買ったらいい?」

など旅の濃度を濃くするため、みなで情報を共有し合う。

 

そんなやりとりが少しずつ生まれてきている。

 

「人」がいる温かさ、地域としての役割

 

 

善光寺に明かりが戻り、人が戻ってき始めた。

少しずつではあるが、宿泊客も入りはじめ、善光寺の歴史の1ページがめくられた。

 

宿坊としての機能、役割はもちろんのこと、

地元の方々も気にかけてくれるようになった。

 

そんな中、地元の方からいただいた言葉がとても心に響いた。

 

「お寺に明かりが戻って、安心したわ〜。」と。

 

安心? と思ったのだが、よくよく聞くと、街中に明かりも灯らない薄暗いお寺があると、薄気味悪い存在となってしまうようである。

これにははっとさせられた。

宿坊を営むことで、ある種玄関や入り口には明かりが常に灯っている。

この明かりが灯り、人がいるということが、地域としての安らぎとして必要不可欠なものであるということを地元の方に教えていただいた。

 

お寺とともに運営をしていく。

その上で非常に大切なことを教えていただいたと思う。

 

お寺は地域と共にある。