ツナガリイムで繋がってくださった皆さまへ
【ツナガリイムで繋がってくださった皆さまへ】
「ツナガリイム」で共に心穏やかな時間を過ごそうと、写仏に取り組んでくださった皆さま、そして、その想いを受け止めてくださった賛同寺院の皆さま、三ヶ月間ありがとうございました。
一体どれだけの人がこの「ツナガリイム」に参加してくださったのか、私には予想もつかないほど、日々多くの方々がインスタグラムやツイッターで#ツナガリイムをつけて情報をアップしてくださいました。
色が塗られた写仏や、キラキラな写仏。新しい模様が増えていたり、背景が描き足されていたり・・・
私の予想を遥かに超えた個性的な写仏が毎日アップされるのがとても楽しみでした。
初めは一人でスタートさせたオンライン写仏プロジェクト。
こうして皆さんのもとへ御朱印が届くプロジェクトに育てていただけた過程は、私自身のアーティストとしての方針を大きく変える貴重な体験でした。
これからの「ツナガリイム」に向けてお話しする前に、私がどんな気持でこのプロジェクトを初めて、どれほど多くの勇気をたくさんの方からいただいたか、少しお話しさせてください。
敗北感と焦りの中で
コロナの悲惨な現状と、アーティストとして何もできない自分の無力さに泣きながら、自分の展覧会の準備に追われていた今年2月。
世界中のアーティストと呼ばれる人々は、自分たちの活動が八方ふさがりになってしまいながらも、今、ここで、自分にできることの最善を尽くして、オンラインという国境を悠に越えるツールを使って皆さんへメッセージを届けていました。
ラジオから聞こえてくるその情報は、最初、私を勇気づけて、個展に向けての準備を進める筆を軽快にしてくれました。
3月、4月・・・
日本での状況がどんどん悪化する中、未知なるウィルスへの不安を募らせ、その不安を情報でさらに煽られて、人々は暮らしを守るためにトイレットペーパーやマスクを手に入れたい一心で多くの人が行列を作り始めていました。
比較的のんきに考えていた私も、多額な投資をしていた自分の海外展覧会が次々に中止になり、航空便が止まって、全ての予定がめちゃくちゃになってしまいました。
何か手を打たなくては行けないのに、一週間後の状況が全く読めない日々。
出展予定だった作品が海外から戻らなくなってしまったために、4月20日から始まる予定だった東京で開催される個展に穴をあける訳に行かず、必死で新作の制作をしていました。
ラジオから流れてくる国内アーティストたちのメッセージ。
共に戦おう!と勇気づけてくれたり、一人じゃないよ!と寄り添ってくれたり。
音楽、映画、様々な分野からこうした活発な活動が発信される一方、次々と閉鎖されていく美術館の情報を聞きながら、絵画は不自由だな、、、と自分のフィールドの柔軟性の無さに最初は嘆いていました。
そのうち、本当に何もできないんだろうか。私は何もしないでただ現状を嘆いているだけでいいのだろうか。
私が伝えたくて描いてきたアートが最もお役に立てるはずのこの時に、東京のスタッフの皆さまを危険に晒しながら自分の保身の為に絵を描くしか無い私はなんて無力なんだろう。
展覧会の日が迫って焦ると共に、状況に流されるままで立ち向かえない敗北感は日に日に増していきました。
オンライン写仏始動
そして、4月6日。
緊急事態宣言発令前日。
私の展覧会の中止が決まりました。
担当のスタッフから連絡があったとき、展覧会が中止になったショックよりも、安堵の方が強かったのを覚えています。
その連絡を受けると同時に私がしたことは、写仏のお手本を無料ダウンロードできるようにする準備でした。
自分の作品を無料で配布するなんて、きっと通常の状況ではとても恐ろしくて決断できなかったと思います。
でも、その時はそのことを考える余裕すらないほど、今できることをしなくては行けないという切羽詰まった気持ちでした。
そして、山梨県身延町にある武井坊住職の小松裕嗣さまへご連絡。
私の自宅に送られてくる写仏を持参するので、5月5日にご祈祷をしていただき、その様子をライブ配信させていただけるようにお願いをしました。
その日の夕方にはFacebookから「オンライン写仏プロジェクト」の配信スタート。
1人でも写仏を書いて送ってくれたら嬉しいな・・・。
そんな気持でした。
それから3日後。
初めて写仏が届いた日の朝のことは忘れられません。
最近は見慣れない直筆宛名の封筒。
宛名は全く知らない方からでした。
山の朝特有なひんやりした空気の中、玄関の土間に座って封を開けると、中から写仏とお手紙が出てきました。
丁寧なご挨拶に御礼の言葉。
それを読みながら、私は大泣きをしました。
自宅待機していた娘がびっくりして部屋から飛び出してくるほど、大きな声をあげてワーワー泣きました。

初めて届いた写仏。大泣きして握りしめたので少しヨレヨレ・・・ごめんなさい。
ちゃんと想いを受け止めてもらえた・・・
私の絵が誰かのお役に立った・・・
皆さんを勇気づけたい一心で始めたはずなのに、このプロジェクトで一番救われたのは自分自身だったことに、この時気がつきました。
それから、毎日1通、2通と写仏が届きました。
老人ホームで利用者の方々と描いてくださった方。
学校に行けなくて不安にしている孫と一緒に時間を忘れて描いてくださった方。
お参りに行きたくても行けなくて心の支えになったと描いてくださった方。
驚いたことに写仏プロジェクトは海を渡って、フランス、イタリア、アメリカ、ギリシャなどへ広がって、郵便事情が不安定な中、一ヶ月以上かけて日本へ写仏が届きました。
写仏と一緒に心のこもったお手紙と一緒にイチゴやマスクなどが届いたりしたこともありました。
参加してくださったのは60名以上の方々。
会ったこともない沢山の方々と写仏を通してご縁できたことが、私にとっては奇跡のように思いました。
『ツナガリイム』へ
プロジェクト開始後しばらくして、私は自分が体験したこの感動を誰かにもシェアしなきゃ!と思い立ち、
山梨県で超宗派のお坊さんで活動する「SOCIAL TEMPLE」代表の近藤玄純さんへお電話をして、私の想いをトップギア状態でしゃべりまくりました。
思い立ったら吉日な私。
泣いたり笑ったり、頭がまとまらない上に気持が前のめり過ぎて、話しの内容はいつも以上に支離滅裂だったと思います。
日本全国40カ寺以上から特別御朱印を無償で発行していただくなどという、普通に考えたらあり得ない企画を実現できたのは、坊主道の皆さまのお力があってこそ。
そして、この無茶な企画に快諾して、皆さまの写仏や想いを受け取って、無償で御朱印を送り続けてくださった日本全国にある賛同寺院の皆さま。
慈愛ある賛同寺院の皆さまがいらっしゃらなくては、ここまで多くの人を引きつける魅力的なプロジェクトにはなりませんでした。
この場を借りて心より深く御礼申し上げます。
ありがとうございました。
発起からわずか3週間でオンライン会議で賛同寺院の方々へ説明会をさせいていただき、4月27日に「ツナガリイム」は産声を上げました。
毎日がアイデアに溢れた怒濤の創造花火が打ち上げられたような打ち合わせだったように思います。
普段は一人で絵を描いてばかりいて人と一緒に何かを作り上げる経験があまりない私にとっては、三人よれば文殊の知恵とはこのことか!と思うような面白い科学反応の連続でした。
「ツナガリイム」は3ヶ月で6000枚以上の御朱印が発行されるほど、多くの方々にご参加いただき、写仏を奉納してくださった皆さまと、その写仏を全力で受け取ってくださった多くの寺院に支えて大きく成長しました。
活動をSNSで知ったお寺からお問い合わせいただき、有り難いことに徐々に賛同寺院も増えていきました。
やがて海外部門が立ち上がり、ついには写仏の書き方ポイント動画の撮影編集までしていただくことになり、YouTubeでのオンライン写仏会の配信など。どんどん多くの方が関わってあれよあれよとプロジェクトが大きくなっていきました。
自分の不甲斐なさに泣いていた今年始めには、半年後にこんな奇跡が起きるなんてこれっぽっちも想像できませんでした。
この『ご縁=繋がり仏=ツナガリイム』は私のかけがえの無い財産です。
ありがとうございました。
新しい『ツナガリイム』にむけて
終了にあたって、多くの方から終了を惜しむ声をいただきました。
きっとwithコロナの暮らしはこれから日常へとなっていくでしょう。
それを受け入れていくことは、人々へ多くの疑問や不満を生み出していくと思います。
だからこそ、より一層情報に振り回されず、常に何が本当にこれからの私たちに求められているかを思考するための、自分軸で立ち戻る時間、穏やかな心を保つ時間が必要があると私は思います。
参加してくださった皆さまへ。
支えてくださったお寺の皆さまへ。
私にできる恩返しは何だろう・・・と、ずっと考えてきました。
そして、決心しました。
私は『リアル写仏会行脚の旅』を企画実行して参ります。
コロナの状況を見ながらですが、今度はリアルに人々とお寺を繋ぐ架け橋になりたいと考えています。
お寺という箱ではなく、共に今を戦うご住職に会ってもらいたい。
そして、共にこの時代を戦うための教えを伝えていただきたいと思っています。
そして、写仏会と一緒に、ご希望のお寺では、釈尊の言葉を伝えたくて描いてきた私の作品を展示させていただく『移動ギャラリー』をさせていただきたいと考えています。
お寺は葬式や法事をするためだけの場所ではありません。
少なくとも、ツナガリイムにご賛同いただいた寺院のご住職の皆さまは、参加者の皆さまに寄り添いたいと願っていらっしゃいます。
そして、一方で敷居が高く感じて近寄り難いお寺のイメージに悩むご住職の方々もいらっしゃいます。
写仏を通して心を整えて、絵画をたたき台に、2500年前から伝わる教えを、今の私たちの暮らしに実践として使える言葉で伝えていただける時だと思っています。
参加者の皆さまに、不安なことを受け止めてくれる場所があることを知っていただけるきっかけになりたいと思います。
そしてもっと『深ツナガリイム』へ!
もっと写仏をやりたい、より深く学びたい、という皆さまの声に応えて、今までのお手本を引き続き無料ダウンロードできるようにし、さらに、新しいお手本を楽しんでいただけるような準備もしています。
もっと上手に書きたい!
筆を使って写仏してみたい!
という声に応えて、オンライン写仏レッスンもしたいと思っています。
そして・・・
レッスンしたら実践あるのみ!!
お寺でぜひリアルな写仏を体験してください。
自宅では絶対に味わえない、極上の写仏会体験していただけます。
さらに、写仏を通して作品などに興味を持っていただけた方へ、もっと映水を知っていただいて作品が生まれるまでのストーリーをご紹介したり、山梨大使でもある映水がご案内する日本一小さな町早川町のご案内や、山梨の美味しいものレビューなどをお伝えしていくことも考えています。
そうした暮らしの中で日々死闘している作品制作風景や、限界集落と呼ばれる山村に暮らす私が感じる様々な想い、そこから生まれる釈尊への想いなどを素直にお伝えしたいと思っています。
その第一歩として、まずは今後のツナガリイムの活動をご案内する、ツナガリイムのFacebookページを作りました。
新しいお手本のご案内や、リアル写仏会行脚の予定、移動ギャラリーの情報をアップしますので、みなさま いいね!をよろしくお願いします。
皆さんと共に、日本のお寺をステージに、より深いリアルな『ツナガリイム』に育てていきたいと思います。