「タイの “ 病縁 ” に学ぶ」研修会のご案内 ※オンライン中継あり

「タイの “ 病縁 ” に学ぶ」研修会のご案内 ※オンライン中継あり

【病をきっかけに「人とつながる」という在り方】

仏教でも「病苦」と言うくらい、病とは思い通りにならないもの。

辛く苦しい思いをされている方も多いかと思います。

それでも人は、そんな病ですら、誰かとつながる機縁にできるとしたら――どうでしょうか?

例えば、東南アジアのタイでは、1980年代後半、HIVウイルス感染率が人口の1%を超えるほどの社会問題になりました。
北部のパヤオ県においては、経済格差などの影響もあり、1984年から2014年にかけて、50人に1人(2%)がHIVウイルスに感染してしまったそうです。
HIV陽性者・AIDS患者たちは、病そのものの症状に加え、HIVへの無理解・差別や偏見に苦しむことになりました。
しかし、同県のある農村では、国家プロジェクトや、それに伴う様々な立場の方――行政機関から宗教者までー―の連携・協力や、出会いのもと、それまで家に籠もっていたHIV陽性者たちが自ら、新たな関係や居場所を築いていったそうです。
そのような、タイ北部におけるHIV/AIDSをきっかけとした人々のつながり(病縁:びょうえん)を、12年にわたり見つめてこられたのが、地域研究者にしてドキュメンタリー映像作家でもある、京都大学 東南アジア地域研究研究所 連携講師の直井里予(なおい・りよ)先生です。

ドキュメンタリー映画作成のきっかけとなった、HIV陽性者たちとの出会いについて、直井先生はこう語ります。

”一目惚れでした。
サッカーをしている彼らの中には、生きる喜びがあって、とても輝いていた。
その輝きを伝えたくて、番組の取材が終わった後も、残って取材を続けたんです。
でも〈中略〉病院に一緒に通ったり、カメラを抱えて家に行っても撮らずに帰ったりで、家の中に入るまで、1年以上かかりました。”
( 山形国際ドキュメンタリー映画祭 監督インタビュー「彼らの“生きる輝き”に出会って」 )

こうして3年間ほど、HIV陽性の2家族の「生の根をじっくりと見つめ」、対話を通して創げられた、最初のドキュメンタリー映画『昨日 今日 そして明日へ…』は、現地・タイの新聞でこう報じられまました。

”彼らにとっては、この静かなあるがままに見据えたドキュメンタリーが示すように、HIV感染とは生きることの現実であり、時々刻々をそれとともに生きなければならないものであり、それとどう向かい合うべきかなどと考えている暇はないのである。
父親の率直な言葉は残酷ではないが、しかし悲しいものではある。
なぜならその言葉は息子にではなく、彼自身にもむけているからだ。
「お前はやがて死ぬ.そしてまもなくお母さんもおれも死ぬんだよ」と彼はいう。”
映画公式サイトより )

北海道のお坊さんチーム「てらつな」が主催します、超宗派だからこそできる学びの会「てらつな研修会」。
4度めとなる今回は、『昨日 今日 そして明日へ…』の上映会と、監督・直井里予先生をお招きしての講演会の2本立て構成を、札幌・オンラインの2会場同時進行でお届けいたします。

【研修会の構成】

まずは17時より、札幌・オンライン両会場にて、直井先生の監督作品『昨日 今日 そして明日へ…』(2005年、90分)の上映会を行います。

ついで19時からは、タイ東北部の地域研究を20年ほどされてきた、北海道大学大学院文学研究院 社会学講座 教授、また「てらつな」顧問の櫻井義秀(さくらい・よしひで)先生から、「タイのHIV/AIDS、ホスピス寺院、ケアのコミュニティ」について、解説していただきます。

その上で、直井先生、櫻井先生の対談、さらには札幌・オンライン両会場のフロアの皆さんも交えたトークで、映画が伝えるものや、タイのHIV/AIDS問題について、また生きること・死ぬことそのものについて、深めていきましょう。

*全体的に、オンライン参加の方の「目の疲れ」に配慮し、こまめに休憩を挟んでいく予定です

 

【札幌とオンラインにまたがる空間ということ】

直井先生は、ドキュメンタリー映画のリアリティを創りあげる、“その場で出会った者同士が引き起こし、経験する「場の力」”を、共振(きょうしん)と呼びます。(※1:24ごろ)

そして興味深いことに「共振」は、上映会において、その映像を観る者との間にも生まれるそうです。

”その空間に主人公であるHIV陽性者が不在である場合でも、一つの空間の中で、全く見知らぬ他人と同席し、同じ映像を観てその映像について語り合う。
〈中略〉同じ映像に対する他者の異なった(さまざまな)意見が交わされる(共振する)中で、固定観念が崩れ、新たな視点が生まれる可能性がある”

( 『病縁の映像地域研究 タイ北部のHIV陽性者をめぐる共振のドキュメンタリー』より )

今回は、札幌会場とオンライン会場にまたがる、特殊な上映空間・対談の空間が広がります。

 

新型コロナウイルス感染症の影響により生まれたとも言える場で、共に「タイの“病縁”」を見つめることは、「私たちの今の在り様」を省みる1つのきっかけともなるでしょう。
札幌とオンライン、両会場あるからこそ、コロナで身動きがとれない今だからこそ、新たな視点が生み出せるような――そんな4時間に出来たらと思い、私たちは準備を進めているところです。
札幌・オンライン両会場で、皆さまのお越しをお待ちしております。
お申込みはこちらからどうぞ。
(*お申し込みにあたっては、以下の概要と、札幌会場参加者の方は「札幌会場における、新型コロナウィルス感染予防策について」も必ずご一読くださいませ)

 

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『タイの“病縁”に学ぶ』 (てらつな研修会Ⅳ + ウェルダイングセミナー )

日時:令和2年11月10日(火)17:00-21:00
会場:
①札幌会場  崇徳山 覚王寺 ( 札幌市北区麻生町5丁目2-12 、※定員20名 )
②オンライン会場 (上映会YouTube 、講演会Zoom )

講師:
京都大学 東南アジア地域研究研究所 連携講師/映像作家
直井里予先生 ※Zoomにて登壇
北海道大学大学院文学研究院 社会学講座 教授
櫻井 義秀 先生 ※札幌会場にて登壇
参加費:無料
申込み: https://forms.gle/njYPPrFZS5NnkR679 (〆切:11月9日終日)
問い合わせ先: teratsuna.hokkaido◆gmail.com (◆を@に変えてご連絡ください)
主催 てらつな
共催 科研「高齢多死社会におけるウエルビーイングとウエルダイングの臨床社会学的研究」(櫻井義秀 研究代表)

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◎進行予定
17:00-18:30 ドキュメンタリー映画『昨日 今日 そして明日へ…』上映会
※オンライン会場では、YouTube限定URLにて生配信予定
18:30-19:00 休憩 (19:45 オンライン会場後半用Zoom部屋オープン)
19:00-21:00 ①櫻井先生によるご講演 「タイのHIV/AIDS、ホスピス寺院、ケアのコミュニティ」(20分程度)
② 直井先生と櫻井先生の対談(約30分)
③ 両フロアを交えてのトーク(約30分)
※適宜小休憩を挟みます※
その他:参加者限定アフタートークを11月13日(金)20:00より開催致します。

●講師の先生プロフィール●
直井 里予 先生
京都大学東南アジア地域研究研究所・連携講師/映像作家
1998年よりアジアプレス・インターナショナルに参加し、ドキュメンタリー映画を制作している。近著に『病縁の映像地域研究―タイ北部のHIV陽性者をめぐる共振のドキュメンタリー』(京都大学学術出版会 2019)などがある。

櫻井 義秀 先生
北海道大学大学院文学研究院 社会学講座  教授
専門は宗教社会学、東アジア宗教文化論。
近年は宗教と幸福感・健康についての実践的な研究を行っている。

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※札幌会場における、新型コロナウィルス感染予防策について※

(札幌会場参加希望の方は、必ずお読みください)

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運営一同、スタッフの体調管理、消毒、座席の間隔の確保、換気に努めて参ります。
参加者の皆さまにおかれましても、以下の3点にご協力をお願い致します。
①「人との距離の確保」「手指消毒」「マスクの着用、咳エチケット」「会場受付時の検温」にご協力ください。(※休憩時間等に飲食をされる場合は十分にご留意ください。)
②当日、発熱(37.0℃以上)症状のある場合、また新型コロナウィルス陽性の方の濃厚接触者となった場合は、オンライン会場にてご参加ください。
(今回、札幌会場参加者様のオンライン会場への振替えは、「いつでも、理由問わず」受付しております。
上記問い合わせアドレスに、「札幌会場に行けなくなった」旨のみ、ご連絡ください )
③その他、道内の状況の変化により、急な対応変更をご連絡する可能性があります。

どうかご了承、ご協力くださいますよう、お願い致します。
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