ご利益寺を巡ろう!日本一の鳴き龍で有名な甲斐善光寺の歴史と魅力をご住職に聞きました

ご利益寺を巡ろう!日本一の鳴き龍で有名な甲斐善光寺の歴史と魅力をご住職に聞きました

こんにちは。県内寺院を参拝した折に、ご縁があり「お寺のじかん」にライターとして参加させていただきます、武田 紗嬉です。よろしくお願いします。
私の記事では、カメラを首から下げペンを片手に、県内の寺院巡りをしながらそのお寺のご住職に取材をし、お寺の知りたいこと、気になることをリサーチしていきます。

第一回目は、浄土宗の甲斐善光寺へ取材に伺いました。


 甲斐善光寺の歴史

甲斐善光寺(以下、善光寺)は、川中島の合戦の折、信濃善光寺の焼失を恐れた武田信玄公が、金堂、山門、御本尊善光寺如来像等を遷座(せんざ=移動)したお寺です。
善光寺を正式名とする寺院は全国に119か寺あり、善光寺如来像は全国約500か寺にあります。

善光寺の金堂は東日本最大級の木造建築であり、山門や木造阿弥陀三尊像、源頼朝像等とともに文化財に指定されています。

日本一の鳴き龍、お戒壇巡り

日本一の鳴き龍、お戒壇巡り

鳴き龍とお戒壇巡りは金堂にあり、拝観すると体験ができます。(拝観料500円)私も実際に体験してきました。

鳴き龍

金堂の天井には大きな龍が二頭描かれており、鳴き龍の下で手を叩くと、金堂の中を音が響き渡ります。(多重反響現象)善光寺の鳴き龍は日本一の規模を持っています。

私も手を叩き、響く音を聞くと、心がすうっと洗われるような爽やかな気持ちがしました。

お戒壇巡り

順路を進み、金堂の下には「心」の字でかたどられたお戒壇巡りがあり、その途中にある鍵に触れることによって御本尊様と御縁を結んでいただけると言われています。

こちらも体験してきました。お戒壇巡りの中は灯りがなく、左壁に手を付きながら暗闇を進んでいきます。私が人一倍怖がりなこともありまして、冷や汗をかきながら怖くない怖くないと独り言が出てしまうほどでした。(笑)私にとっては長い長いお戒壇巡りに感じました。(実際は短いのです。)鍵も見つけて触れることができました。この鍵は御本尊様の真下にあたるのだそうです。

霊牛碑

金堂の東には、善光寺にまつわる伝説である、霊牛の角が埋められた霊牛碑があります。(霊牛の角は二本あり、一本がここに埋められ、もう一本は宝物館で一般公開されています。)霊牛碑には流通、商売繁盛の御利益があります。

銅鐘

この鐘は武田信玄公によって、信濃善光寺から甲斐善光寺までの長い道程を引きずって運ばれたものです。そのため、「引きずりの鐘」の異名があります。

この鐘には、なんと今も引きずられた跡が残っているそうで、驚きです。
長い時を経て、跡が残っているほど大きく重い鐘。汗をかきながら、必死に運んでくる方々の情景を思い浮かべてみると、ありがたみを感じますね。


甲斐善光寺ご住職、藤井明雄(ふじいみょうゆう)さんに聞いてみました

甲斐善光寺ご住職、藤井明雄(ふじいみょうゆう)さん

――どんな参拝者が来られますか

「観光バスで来られる団体さん、自家用車で来られる方、檀家さん等ですね。特に、関東圏の東京、神奈川、埼玉からの方が多いです。年間約20万人が参拝に来られます。」
近県の方や、やはり観光シーズンが多いみたいですね。

――どんなご利益がありますか

「ご利益とひと言でいうのは難しいのです。例えば、金堂の中に絵馬がありますが、家内安全を祈願する方がいれば、合格の祈願をする方もいらっしゃいます。どんなことを佛様に祈ってもいいのです。しかし、佛様の前でお願いしたことは、すべての人が必ずしも実現するものではありませんね。佛様に手を合わせ、祈ることで、気持ちが和らぐことがご利益なのかもしれません。」
ご住職は、こんなお話も交えて教えてくれました。
「昔、宮本武蔵が残した「神仏を敬うべし、頼るべからず」との言葉があります。」

○○大学に合格しますように、と佛様にお祈りしたとしても、もしかしたら、○○大学に合格できないかもしれませんよね。
信じて、佛様にお祈りしたのに、頼りにしていたのになぜ!と思うのは違う。宮本武蔵は、佛様を尊び信じているけれど、いざ頼りにするのは自分だ、ということなのです。私も負けん気を発揮するタイプで、こうした心持ちを大事だと思っているところがあり、この話を知られて嬉しくなりました。

――住職として苦労する点はありますか

「住職として、佛様にお仕えする身としての役割と、寺院を運営する役割があります。このふたつのバランスをとるのが難しいですね。世間でも、お寺は存続の危機と言われています。今のご時世、少子高齢化や若者の地方離れが課題に挙がる中で、仏教離れも進んでおり、仏教を家庭内で教え伝えることの減少、自分の家の宗派やお寺を知らない若者も増えています。」

恥ずかしながら私も、自分の家の宗派や、お嫁に入る時はそちらの家庭のお寺・宗派に入ることも知らずにいました。気にするきっかけがなければ、知らずのままの若者はいるだろうなと思いますね。

「そんな中で、どうしたらお寺に来ていただけるか、広めていけるのか。どうしたら檀家が教化できるのか、が課題です。」

私たち若い世代に、お寺や仏教、素敵なお坊さんを、知ってほしいと、身近に感じてほしいと思います。私もちいさなきっかけで好きになった身です。その、仏教との橋渡しをするためにも、精力的に「お寺のじかん」での発信を続けていきたいですね。

――好きな仏教の言葉を教えてください

「私のモットーは『和顔愛語』と『先意承門』です。」

和顔愛語(わげんあいご)とは

「話をするのに気難しい顔をされていたら嫌ですよね。和顔とは穏やかで優しい顔、愛語とは優しい言葉ということ。誰にでも優しい顔で優しい言葉であることを大事にしています。」

少々耳が痛いです…(笑)真面目な話になると顔が怖いよと言われることがある私です、しっかり心に刻みたいです。大変勉強になります。

先意承門(ぜんいしょうもん・せんいしょうもん)

「相手の話を尊重し、よく聞きなさい。承知の承を書くように、よく理解しなさいということです。真向からの否定は争いのもと。話をしていて、良いか悪いか白黒つけるのではなく、『あなたはそう思うのですね、私はこう思います。』と、答えを曖昧にし、対話してもいいではないでしょうか。」

時に人は、自分の思いが強ければ、伝えたい、分かってほしいがためにムキになったり、相手の話を否定してしまうこともありますよね。私の場合は親ほど身近な人になると、ムキになってしまうことがあります。よくないと分かっていて、気を付けているのですが。(笑)せっかくの対話するほどの仲です。 相手の立場にも立って、対話をできればお互い気持ちがいいですよね。
「座右の銘をもつことはいいですよ。」とご住職はおっしゃいました。今日知ったばかりのふたつの言葉は、私の心に響きました。今後大事にしていきたいです。また次回以降伺うお寺でも質問していきますので、どんな言葉を知ることができるのか楽しみです。

――どんなお寺にしていきたいですか

「善光寺信仰を広め、より多くの方に来ていただけるお寺にしたいです。」

善光寺信仰とは

奈良・平安時代に、寺院は厳しく女性の立ち入りを拒んでいました。これに反発して、親鸞、道元、日蓮たちが興した鎌倉仏教で女性の善光寺信仰が盛んになります。もともと善光寺は女性を救うお寺として知られていました。
藤井住職は「女性に親切なお寺です。」とおっしゃっています。

「金堂に入り正面に、大きな二本の柱があり、金色の文字でこう書いてあります。」

右の柱

佛身は円満にして背相なし(佛様は穏やかで分け隔てなく、背中を向けることはありません。)

左の柱

十方来人 皆対面(十方から来る人、どなたでも対面します。)

「こうあるように、善光寺は、宗派を問わず、性別や身分を問わずに誰でも受け入れる庶民のお寺として親しまれてきたのです。
最近は、主に女性の間で御朱印集めが流行していますね。こちらも、歓迎します。どんなきっかけでも、お寺に来ていただけることが大事だと思っています。」
私も、お寺が好きな一人として、お寺が多くの人にとって身近であったらいいなと思っています。善光寺では、静かな場所で読書をしている方がいたり、山門に腰かけたカップルがいるのを見かけるそうです。私はお寺や仏教にまだ詳しくないですが、お寺の落ち着く空間に、ただいるだけで、心の水面が平穏になって、すっきりした気持ちになっていくのです。これも、ご住職のおっしゃる、御利益なのかもしれませんね。

――このお寺の好きなスポットを教えてください

【ご住職】
金堂を、少し離れたところから眺めてみると、やはり立派だなあと思いますね。

夕焼けに照らされた金堂の写真

【善光寺執事の渡辺さん】
この角度で見る景色がすきです。お地蔵さんがこう並んでいるのもいいですよ。

お地蔵さんが並んでいる様子の写真

【私】
私は手水舎越しにお庭を覗いてみた景色が、どこか温もりを感じ、お気に入りです。金堂西側にある薬師堂では、夕日が射して周囲の木の葉が光り、神秘的でした。

手水舎越しの景色の写真

甲斐善光寺 ご案内

甲斐善光寺 HP
TEL 055-233-7570
住所 山梨県甲府市善光寺3-36-1