お寺と子どもたちとの新しい接点に:「寺GO飯」寺院関係者&ボランティアスタッフインタビュー
無償のサポーターが集う場所
昨年2月まで山梨県甲斐市の「功徳院」で月に一度開催されていた、一般社団法人SOCIAL TEMPLE主催の“お寺版子ども食堂”プロジェクト「寺GO飯(てらごはん)」。
新型コロナウイルス拡大の影響で現在はオンライン開催となっている「寺GO飯」ですが、本プロジェクトは寺院関係者に加え、料理人の方々や学生の方々など、多くの人々による無償のサポートに支えられています。
そうした協力者(コラボレーター)の方々をご紹介する「寺GO飯 つくるひとびと」。今回は、オンライン開催となる前、功徳院での開催に参加していた寺院関係者および一般ボランティアの皆さまにフォーカスして、「寺GO飯」へ参加することになった経緯や参加した感想などを伺ってみました(記事は取材順に掲載しています)。
▼皆さまからの支援に、いつも感動
甲斐市 浄土宗 功徳院
・「寺GO飯」参加の経緯を教えてください。
主人がここ功徳院の住職で、私も普段から掃除やお客様への対応等、お寺のお守りをしています。ですから、何年か前に超宗派グループの「坊主道」が、「お寺に子どもたちを集めて食育をしたい」ということではじめた「寺GO飯」も最初からお手伝いをさせていただいていました。
・どのような役割を担当していらっしゃいますか?
主に調理の補助をしたり、飲み物をご用意したりしています。多いときは50~60人ぶんのご飯を用意するので準備や片付けはバタバタしているときもありますね。当日、私自身は午前中から本堂の掃除等をはじめていて、午後2時頃から関係者の方々がお寺にいらっしゃるので、ご一緒に開催の準備を進めます。併せて、「坊主道」メンバーの皆さまがつくってくださっている「寺GO飯」の開催チラシを分配したりして、後日、近くの小学校に配布していただいています。
・参加してみて、どのような印象を持ちましたか?
やはり子どもたちはエネルギーがありますね。すごい勢いで遊んでいますから、たまに本堂の障子を破かれたりして(笑)。でも、そのぐらいは予想の範囲ですし、せっかくお寺に来てもらったときぐらいは、のびのび遊んでもらいたい気持ちが強いです。とにかく、今はお寺で子どもたちに楽しんでもらっていること自体が嬉しいと感じているので、どんどん遊んでもらって構わないです。
・今後運営スタッフとして参加したいと考えている方に、何かメッセージがあればお願いします。
寺院関係者でなくともボランティアで参加してくださっている方もいて、皆さま、「子どもたちにご飯を喜んでもらえたりするのは嬉しい」と言ってくださっています。参加する楽しさは、実際に会場まで来ていただければ感じていただけると思いますね。それと、私としては「寺GO飯」のプロジェクトに対して、多くの皆さまから寄付をいただけている点が本当にありがたいと思っています。お米や野菜をいただいたりして、さまざまな人の支えのなかで開催できているということを実感するし、いつも感動しています。
▼学生の方々が気持ち良く関われる環境に
甲州市 日蓮宗 法盛寺 副住職
・「寺GO飯」参加の経緯を教えてください。
「寺GO飯」実行委員会事務局長の浅野上人とは、同じ日蓮宗で普段からお付き合いがありました。そのご縁で、「寺GO飯」についても「一緒にやってみないか?」と声を掛けていただき、昨年2月からサポーターとして参加させていただいています。
・どのような役割を担当していらっしゃいますか?
最近は14時頃にこちら功徳院へ来て、小学校に配るチラシを分配したりしています。そのあと16~17時頃からは受付対応を行って、手洗い等のお声掛けをさせていただきつつ、全体の進行を取り仕切る方の補佐をするイメージですね。お子さんのお相手をするのは大変なイメージがありましたけれども、その辺は学生の方々が主に見てくださるので、私たちはそのサポートとして、とにかく学生の方々が気持ち良くできるような環境をご用意できればいいなと思っています。
・参加してみて、どのような印象を持ちましたか?
「寺GO飯」では、最初にお経を読み聞かせ、法話も聞いてもらって、そして皆で座禅を組みます。それをしないと他の“子ども食堂”と同じになってしまいますし、その辺は、お寺でやる意義を出せているかなと思います。そのうえで、あとはたくさん遊びたいという子どもも多いので、あまり制限をせず、怪我だけしないよう、大人が注意すべきところを注意できれば思っています。当初はいろいろ大変なこともあるかなと思っていましたが、たくさんの方がスタッフとして入ってくださって、今は皆さまがそれぞれ自主的に動くなかで役割分担ができている感じです。そのぶん、子どもと遊んであげたりすることもできているので、私たち自身が楽しんでいます。
・今後運営スタッフとして参加したいと考えている方に、何かメッセージがあればお願いします。
最初は簡単な気持ちで、「見学や遊びに来てみようかな」という感覚でいいと思っています。私もスタッフとして参加する前は見学で来ていましたので、ぜひ気軽に足を運んでいただきたいです。新しい方に来ていただくと、新しい発見も多いですね。いつも参加しているスタッフだけだと気づかない点もありますから、何か気になるようなことがあれば新しいスタッフの方にどんどん手を挙げていただくことで、より安全に、より良い環境にできると思っています。
▼我々世代も参加すれば新たな気付きが
甲府市 臨済宗 香積寺 住職
・「寺GO飯」参加の経緯を教えてください。
こちら功徳院の住職である渡辺光順さんと、「寺GO飯」実行委員長である禅林院住職の山田哲岳さんには、もともと大変お世話になっていました。そうした方々が、「食育をしたり、子どもにお寺と馴染んでもらえるようなきっかけをつくりたい」ということではじめられた「寺GO飯」ですから、もう私としては無条件で参加させていただいています。儲けをあげるような活動ではありませんし、給料をいただくわけでもありません。とにかく、子どもさんが元気にお寺へ集まって、お母さんたちが少しでも助かるようなことができればいいなあ、と。こうした活動は否定するような点がどこにもありませんから。
・参加してみて、どのような印象を持ちましたか?
お家にしても学校にしても、現代の子どもたちは狭い場所に押し込められているように感じます。しかし、お寺には本堂も広く、畳で怪我もしづらく、思いきり手足も伸ばせます。こうした環境は最近減っているように思いますね。そういう意味で、自由に遊んだりできるお寺に来たうえで、たとえば座禅のような体験を少しでもかじってもらえたらと思います。お寺というと、子どもにとっては敷居の高い場所だったと思いますので、まずは「寺GO飯」のような経験からお寺に馴染んでもらいたいです。
・今後運営スタッフとして参加したいと考えている方に、何かメッセージがあればお願いします。
「私のような年寄だって参加していますよ?」ということで(笑)、若い方にはなおさら、理屈抜きで参加してみていただきたいと思います。私たちのような世代でも、まずは来てみて、精一杯やってみると、新しく気づくこともありますし、得をさせていただくことがあります。やってみなければ分からないことはたくさんあるのだと、改めて思いますね。とにかく、全体の方向性として子どものために良いことばかりの活動ですし、否定するような点がない以上、あまり細かい理屈は考えずに、体験してみていただいたらいいと思います。参加してみたうえで、もし「合わないかな」と感じたら、そのときに改めて考えればいいと思いますので。活動を通して、自分自身として何か感じていただけるものがあればいいなと思いますね。「寺GO飯」には20代の若手から70代の坊主まで、幅位広い世代が集まっていて、それぞれがこの活動を自身の役に立てています。ぜひ、1度お寺へいらして経験していただきたいと願っています。
▼関わってくださる方々が飛躍できる場に
日蓮宗 妙秀寺 住職
・「寺GO飯」参加の経緯や、担当していらっしゃる役割を教えてください。
第1回目から運営に参加していて、現在は事務局長を務めさせていただいています。役割としては、会計を締めたり、甲斐市教育委員会に開催の許可を取ったり、次回開催のチラシを制作したり、それを小学校へ配布したり、ホームページに記事を掲載したり。そのうえで、参加する方々の取りまとめを直前1週間ぐらいで進めます。意外とこまごました仕事が多いですね。「寺GO飯」がスタートした当初は今のような役割を想像していませんでした。ですから、実行委員会として進めていくうち、しばらくはいろいろと問題にぶつかったり苦労もしたりしましたが、最近はようやく月1回の開催スケジュールにも体が慣れてきた感じです。
・この活動を通して、どのような目標をお持ちですか?
私個人がどうこういうというより、特に携わってくださっている学生さんたちが飛躍できるような場になれば、こうした集まりも有意義になると思います。年代も離れていて普段は接点がない方々が、こんな風にして「寺GO飯」をサポートしてくださっているわけです。ですから将来的には、たとえば「寺GO飯」での活動を履歴書に書けば就職活動も有利になるようなものになれば、と。この活動の認知を拡大させていくことで、そんな風になればいいなと思っています。
・仏教に親しんでいただくという部分で、何か意義を感じている点はありますか?
その辺もお伝えしていければいいなと思いますが、あまり前面に出し過ぎても(笑)。そういう部分を「寺GO飯」の活動だけで伝えきるのは難しいですし、まずは入り口というか、ご縁ができるきっかけになればと思います。私たちとしても、こうした活動がなければ普段は子どもたちとの接点もありませんでした。でも、たとえば「(「寺GO飯」に来るようになったことで)食べるとき手を合わせられるようになった」と。そんなお話を、後日お母さんたちから聞いたりすると、多少なりとも仏教的なものを伝えることができているのかなという気はします。
・今後、「こうしていきたい」という目標は何かありますか?
いろいろな場所で開催できたらいいなと思いますし、同様の活動が増えていって欲しいとも思います。我々の主催でなくても、こうした枠組がもっと広がって、第2、第3の「寺GO飯」のようなものができたら、それが一番の意義になるのかなと思いますね。そうした広がりのなかで、サポートしてくださる学生さんにも恩返しができればと願っています。
▼まずは「ちょっと寄ってみろし」
一般ボランティア
・「寺GO飯」参加の経緯を教えてください。
南アルプス、法源寺の檀家であり、ご住職の横山瑞法さんを通して「坊主道」の活動を知っていたので、「寺GO飯」についてもFacebookの情報を見たりしていました。それで、私は介護・福祉の仕事をしていて休みが不定休だったので、「行ける日があれば行ってみようかな」と。もともとお寺が好きだったので、お寺で子どもたちと一緒にいろいろなことを学んでいくような場で何かお手伝いがしたいと思っていました。
・参加してみて、どのような印象を持ちましたか?
最初は興味本位で参加した活動ですが、子どもたちの楽しそうな表情を見ることができたりすると、本当に嬉しい気持ちになります。それに、私自身が子どもたちや親御さんたちから学ぶことも多いですし、男性スタッフの方々が洗い物をしたりしているのを見て、「いいなあ」と思ったり(笑)、毎回、新しい発見や喜びがあります。宗教というと厳格なイメージがありますが、「寺GO飯」は宗派も世代も超えて、いろいろな人が隔たりなく、ひとつの行動を通して心もひとつになっている感覚がありますね。子どもたちとの関係も同じです。たとえば「ここは火があるから危ないよ」なんていう風に注意したりすることはありますが、上下でボーダーラインがあるような関係ではないですから。
・どのようなときに嬉しさを感じたりしていますか?
たとえば私たちが食器を洗っているとき、いつも走り回って遊んでいる子どもがふらっとやってきて、「手伝うよ?」なんて言ってくれたりして、親御さんも「そんなこと、家ではしないのに」と(笑)。帰り際に、「おいしかった。また来るね」なんて言ってもらえたりすると、「やっていて良かったなあ」と思います。また、私自身、調理のお手伝いも含めて自分が普段やらないことができるようになったりするし、皆と一緒に自分も成長しているという思いもあります。
・今後運営スタッフとして参加したいと考えている方に、何かメッセージがあればお願いします。
「ちょっと寄ってみろし」と(笑)。とにかく、自分が引き込まれるようなポイントって、それぞれあると思うんですね。私にとっては、それが「お寺」そのものでしたけれども、たとえば事前に「お寺GO飯」のメニューがHPに出たりしますから、それを見て「自分が好きな唐揚げが出るから行ってみよう」でもいいと思います。自分なりにワクワクするようなポイントを見つけて、ぜひ参加してみていただけたらと思います。