お寺豆知識第24回〜数珠の違い〜

お寺豆知識第24回〜数珠の違い〜

お寺豆知識第24回、数珠の違いについてです。

お坊さん同士でも自分の宗派で使用する数珠の意味は知っていても他宗派の数珠のことはよく知りません。
一般の方なら尚更でしょう。

そこで坊主道所属の宗派のみではありますが、各宗派毎の数珠の違いをまとめてみました!

どんな違いや意味があるのでしょうか!?

臨済宗

臨済宗が使う数珠には2種類あります。

1つは看経(かんきん)数珠。
もう1つは本連数珠です。

看経数珠は、移動中やお盆の棚経、お墓での読経、常時携帯している普段使いの数珠です。
数珠自体が長いので2重、もしくは3重に巻いて持参しています。

特徴は、房の部分が組み紐となっているとこではないでしょうか。
組み紐の色は、自分の好みの紐を選んでもらえます。

もう1つの本連数珠は、袈裟などを着けた葬儀や法要、行事などに使います。

特徴は、両側についている正絹の房でしょう。
画像手前の数珠本体から正絹の房までの紐にも数珠玉があり、そちらを上側に腕に掛けます。
房の色は一般的には朱房ですが、僧侶の位(法階)が上がると白房へ付け替えます。

また、数珠に使われる素材は多岐にわたります。
沈香や白檀などの香木。水晶や翡翠・虎目などの石、菩提樹や紫檀・松などの樹木や木の実と様々ありますが、夏は水晶などの石、冬は菩提樹などの数珠を使うなど季節に合わせて素材を変え使っています。

曹洞宗

曹洞宗の数珠は、「百八環金」という金属製の輪(環)が付いています。

房の部分が組み紐となっているのは臨済宗と一緒です。

なぜこの百八環金が付いているのかは、諸説がありはっきり分かっていないようです。
なぜ分からないかというと、この百八環金についての文献が残っていないからです。

諸説には、数珠が臨済宗と同じようなので区別するため、環が禅宗の祖である、達磨大師を表しているなど、他にも説があるようです。

※環が付いていて房の部分が組み紐となっている

曹洞宗では、葬儀や法要の際は、導師のみ数珠を持ち、他の僧侶は持ちません。

私の考えですが、曹洞宗の法要儀礼は導師以外の僧侶の進退が綿密であり、また動きが非常に多いため、数珠を持たなくなったのではないかと思います。

 

浄土宗

浄土宗の数珠には荘厳数珠、日課数珠、百八数珠、百万遍数珠の4種類があります。

荘厳数珠は荘厳服を被着した時に用い、日課数珠と百八数珠は通常服の時に用います。

百万遍数珠は多人数で数珠繰り(数珠回し)をする百万遍念仏を称えるときに用いる大きな数珠です。

これらの中で浄土宗僧侶が平常用いるのが日課数珠で、その形状は紐を通した珠(たま)の輪を二連組み合わせたもので、他宗には見られない独特のものです。

 この二連は輪の大きさには違いがありませんが、輪を構成する珠の数に違いがあります。
1つの輪には親珠(おやだま・・・大きい珠)を中心にそれより少し小さい珠が27顆連なっています(以降①)
もう片方には親珠を中心に少し小さい珠が
20顆連なっています(以降②)
また②の輪の方に房紐が2つ付いており、
1本には平珠が10顆、もう1本には小さい丸珠が6顆連なっています。

通常は二連とも一緒に左手の手首に掛け、合掌の際には人差し指と親指の間に二連とも親珠の部分を挟んで礼拝をしますが、日課数珠にはもう一つ重要な役割りがあります。
それは称えたお念仏の数を数えるというものです。

右手で木魚を打ちながらお念仏をとなえる際には、数珠を持った左手を左ひざの上に自然に置き、親指と人さし指で①の輪を挟み、人さし指と中指で②の輪を挟みます。
お念仏を1回となえるごとに親指で①の珠を一つ、手前に繰っていき、一周したら②の珠を人差し指と中指で手前に一つ動かします。
これを繰り返して二連すべての珠を繰り終えたら、10顆の平らな珠がついた房の珠を一つ上げ、以上の所作をすべて終えたら6顆の丸い珠がついた房の珠を一つ上にあげ
と数を取っていきます。
全ての珠を繰り終えると27顆×20顆×10顆×6顆で32400回のお念仏を称えた事になるのです。

この様に浄土宗の数珠はただの執持物に留まらず念仏の実践に無くてはならない物として存在しています。

 

浄土真宗

浄土真宗では、お数珠のことを「念珠」と呼びます。

浄土真宗は、念仏(南無阿弥陀仏)を何回お唱えしたか、という「回数」は重視していません。
だから、「数珠」ではなく、「念珠」なのです。

浄土真宗本願寺派の本山・西本願寺 第8代門主の蓮如(れんにょ)上人が遺された「ご文章」の中には、「念珠を持たず、阿弥陀如来に礼拝するのは仏様を手づかみにするのと同じことである」と記されています。(『仏事Q&A』前田壽雄著 参照)

念珠は私たちの「信心」の象徴する大切な法具です。そのため、床や畳に直接置かないよう丁寧に扱うことを心がけています。

浄土真宗本願寺派の念珠の持ち方は、合掌し、両手の親指と人差し指の間に念珠を通し、房を下に垂らします。ご門徒さんは、一連の念珠を使うことが多いです。

浄土真宗の仏前結婚式では、指輪の交換ならぬ、念珠の交換もありますよ♪

日蓮宗

数珠は念珠とも言い、元来念誦(南無妙法蓮華経や南無阿弥陀仏)の数を数える道具で、これを操る時は心を落ち着けることができ、また数珠を用いる時は一切の罪障を滅除し、更に甚深の功徳があると言われています。

なお、宗祖日蓮大聖人は「ずず」と呼ばれていました。

日蓮宗の数珠は2種類あり、房仕立ての「装束数珠」と菊房・玉房仕立ての「勤行数珠」があります。

一般的に使用される日蓮宗のお数珠は「勤行数珠」です。

主玉が108個、親玉が2個、四天玉が4個に、浄名玉が1個、弟子玉が20個、露玉が4個、数取玉が10個に、菊房・玉房が5個ついています。
親玉から7個目と、21個目に四天玉があります。
日蓮宗のお数珠は二つある親玉から、房が2本出ている方と3本出ている方があります。
2本出ている方の親玉は、「釈迦如来」を表し、3本出ている方の親玉は、「多宝如来」を表すと言われています。
房が3本出ている方の1本だけ短い房が付いているものは、玉が10個ついており、「数取玉」と呼ばれ、日蓮宗独特の形です。
日蓮宗のお題目、「南無妙法蓮華経」を唱える際、数を数える為に用いられ、10回繰ったら約1000回のお題目を唱えたことになると言われています。

 

ほとんどの場合は左手に掛けます。

勧請(神仏の来臨を願う)、唱題(南無妙法蓮華経を唱える)、回向(死者の冥福を祈る)、四誓(仏様に一歩でも近づくための4つの誓いの言葉)の時のみ数珠を八の字にし、中指の中程に掛けます。房が3つある方が左、2つの方が右にきます。

み・ぎ=2本

ひ・だ・り=3本と覚えると良いでしょう。

 

数珠の選び方は石や木などいろんな種類がありますが、好みのものを選べば良いと思います。

 

以上臨済宗、曹洞宗、浄土宗、浄土真宗、日蓮宗の数珠の違いでした。

それぞれの形の違いや意味がわかったのではないでしょうか?

数珠は個人が持つ唯一の仏具とも言われています。

そんな大事な数珠の意味を少しでも理解していただき、神仏と繋がりを持てることに感謝していただければ思います。

今回は「数珠」の違いを記事にさせていただきました。
次回はまた違った宗派の違いを記事にいたします!