さまざま「祈り」が集まるミーティングポイント!

さまざま「祈り」が集まるミーティングポイント!

コラムテーマ【海外からみた仏教

「宗派はどちらですか?」と、日本の冠婚葬祭などで尋ねられたことはありませんか?
「宗教をお持ちですか?」と、海外では尋ねられる。

私はお寺で生まれて仏教徒の両親に育てられたので、そう聞かれた時は「仏教徒だと思います」と答えている。

多くの外国人の方は「仏教、アメージング!『禅』に興味がある!」と言ってグイグイ詳細を質問してくる。

「ちょっと待って!仏教は13宗56 宗派あってね、私はその中の浄土真宗のね、佛光寺派(ぶっこうじは)で…。で、『禅』については…」と、もう会話のこの辺りで『禅』についてはあまり知らないとは言えなくなっている。

外国人で仏教に興味がある方はかなり知識をお持ちで、下手なことは喋れない。

例えば先日こんなことが。
仏教の話ではなかったが、スペイン人と話していた時に「私、吉田兼好の徒然草が好きなの!」と、かなりの部分を日本語でスラスラと言い、その内容について、ここがこうだから本当に心に沁み感慨深いと熱く語られた。

その話を聞いている間、えっ!?どうやってリアクションしよう…と思いながら、高校の古文の授業で寝ていた自分を呪った。
というように、仏教についても同じことが言え、詳しい話になると、知識と理解がないため面白く興味をそそるネタを提供することもできず話にも乗っかれずその場からそっと逃げたくなる。

しかし良い大人でもあるし、お寺に生まれたこともあるし、日本の文化を説明する上でも仏教は重要なトピックなので、ある程度の知識を持ち、自分はどの宗教の何に興味があると少しは答えられないと恥ずかしいなぁと。

みなさんは、答えられますか?

宗教は何で、どんな教えなのか?
あるいは、なぜ無宗教なのか?
別に言える必要はないと思うが、仏教について外国人から詰められたら結構困ると予想される。

今回このコラムを機会に、いろいろと調べ見聞きした、私事の身近な事柄に興味を持っていただき、「へぇー」と思ってもらえたり、「このコラム読んで!お寺行ってみる?」なんて会話が生まれたら嬉しいと思う。

諸事情で外国に長く住んでいたためか、帰国し日本にいると平和さを実感する。もしかしてメディアで取り上げられていないだけで、実はデンジャラスなのかもしれないが…。

それはさておき、やはり日本は宗教紛争はないし、テロもほとんどないからだろう。
海外にいると、当たり前だが、さまざまな宗教の方々がいらっしゃり、文化もかなり異なる。

そして、宗教について考える機会を持つことも多い。
しかし、日本にいると、大半の人々が仏教徒か神道信者の子孫で、宗教について気に留めることが少ない。

そこで、仏教を知るためには、他を知らないと特徴のようなものがフォーカスできないかもしれない!と思い、コラムのテーマを【海外からみた仏教】とし、やんわり書いていきたいと思う。

テーマは壮大だが僧侶でも研究者でもないので、フォトグラファー&デザイナーの私が気になったポイントをクローズアップし、写真や映像とともにお伝えしたい。

【さまざまな「祈り」が集まるミーティングポイント!ってなに?】

外国をウロウロしていると、否応なしに空港を利用する、どこかの航空会社のゴールドメンバー以上でもない限りラウンジが使えないし、優遇がないので意外にフライトまでの待ち時間が長い。
残念ながらLCCを多用する私は、マイルもたまらず、必然的に空港をフラフラし、フライトまで時間を潰す。

そんなある日、ヨーロッパのどこかの空港で、”Prayer room (祈りの部屋)”を発見した。

おぉぉ、入ってみたい!

でも、かなり入りづらい!!かなり気になったがこの時は心に留めるだけにした。

このコラムのお話を頂いた時、「来たっ!”Prayer room”をみるチャンスが来たっ!」となぜか思ったのである。
見聞きし調べた後、みんな知ってる!?と言いたかった。 というのも、わりと知られていないからだ。

ただ、どうして、”Prayer room”なのか?

たぶん、さまざまな宗教の人が同じ部屋の中でお祈りするというイレギュラーな空間だからだと思う。
他宗教が出会う(物理的にだが) “ミーティング!”する場なのである。そこに興味が湧いたのだ。

そして、ここで一気に共通点や相違点を見出せるのでは、という甘い期待があった。

「あっ、こういうよく似たところもあるよねー」
なんて言われたらなんだか嫌なので、念のため他に複数の宗派が集まるようなところと考えた。が、エルサレム(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の聖地が集まっている)しか思いつかない。
だが、エルサレムだと特定の宗教になってしまう。なので、これは是非紹介したい!しかし、日本の空港にあるのか?が最大の不安であった。

おそるおそる成田空港へ。

【成田空港の”Prayer room”】

私に地図の読み取り力がないのか、空港見取り図には見当たらなく、さらに不安になる。インフォメーションに行き、まず”Prayer room”があるかどうか聞いてみた。

あった!!各ターミナル2箇所づつ計6箇所あった。

日本って凄いなと思う、さまざまな宗教の人を手厚くウェルカムしている。これも日本の『おもてなし』の心なのかもしれないと感心してしまった。

成田空港の規模の空港で6箇所もあるところは他にないと思う。世界のハブ空港でも1箇所あるだけだったような気がする。

ドキドキしながら、迷いながら、部屋を探す。
ピクトグラムを発見。

(成田空港礼拝堂 撮影:©️makouFUJISHITA)

さまざま宗教の『祈り』ができるようだ。

誰かいたらとりあえず出よう、などと思いながら、そっと中へ。誰もいなかったので、ほっと緊張がほぐれ、観察にシフト。

いろんな祈りの儀式は知識としてはあったが、実際には今までに見た事がなかったセッティングもあり、いかに知らないかを知った。ここだと、他宗教のお友達が来日してもそれぞれが、お互いの信仰の祈りができ、一緒にいても大丈夫そうだ。

というのも、オーストラリアのある教会の礼拝に友だちと行った時、教会に入りるやいなや、仏教徒の方は入れません!と友達と引き離されたことがあったのだ。

(成田空港礼拝堂 撮影:©️makouFUJISHITA)

室内はどの宗教の人が入室しても宗教に隔たりがないようにシンプルで清潔感のある明るい空間。些細なところにも気を使った結果だろう日本らしいシンプルさを感じた。

他の国の空港はというと、教会のようなデザインやイスラム教のような感じのところもあるし、今風のシンプルでいてラグジュアリーなデザインのオシャレなところもある。

部屋の隅には、各儀式で使用する絨緞、頭を覆うレースを含む衣服、経典などが置いてある。
旅行で荷物を紛失しても大丈夫なための気配りなのであろう。日本のホスピタリティーを感じとれる。

(成田空港礼拝堂撮影:©️makouFUJISHITA)

イスラム教のウドゥーの設備もある。

イスラム教は他宗教と比較して、祈りの儀式が1日5回と多い。また、身を清める場所や絨毯が必要である。それゆえ、イスラム教のためのものが多いのも納得。

イスラム教・ユダヤ教・キリスト教など、偶像崇拝を禁忌されている宗教もあるようで、象徴的なものは見当たらない。キリスト教のプロテスタントは、十字架がある所、もしくは十字架を身につけて祈るというお話を聞いたことがあるが、何が正しいのか思想や歴史的背景などありよくわからない。
その他にも、ヒンドゥー教・バハーイー教などなど色々な決まりがありそうだ。
何の儀式に使うか不明ものがあり、携帯片手に調べてみたが、多様な宗教宗派があり、わからないまま時間が過ぎていった。

あれ、お仏壇がない…。どうして??

あっ、そうでした。
仏教はお仏壇と向かい合って、仏さまを見ながら念仏を唱えお参りをすることだけが、念仏を唱えることではない、と母が言っていた記憶が。
私の実家がお寺なので、念仏は、本堂の仏さまオンリーでお唱えしていたから、仏様=念仏と思ってしまっていた。

【仏教での祈る場所とは】

仏教は、仏さまの像がなくても、仏さまは自由自在で、いつでも、どこでも、どなたにでも、すぐ側にいらっしゃり、念仏は、いつでも、どこにいても、唱えることができる教えがある。
仏教の宗派によってこの教えの呼び方は異なるようだし、この教えを一単語で表していない宗派もあるが「三種行儀」「即是道場」などと言う。
ただ、この言葉はさらに詳しい意味合いも含意しているので、興味のある方は調べて欲しい。
そして「念仏を唱えるために必要でなければならない」とされるモノはない。

他の宗教の祈りの儀式は時間や場所などかなり詳細に渡って決められていることを改めて感じた。
逆に仏教は、念仏や題目を唱えたり手を合わせることは、個人の時間や場所に委ねられており、私には自由さが感じられた。
ただ、自由すぎるがゆえにハードルが高いことなのかもしれないとも思う。

“Prayer room”だが、日本なのでお仏壇や神棚があっても良いのでは?
だた、お仏壇となると各宗派によって仏さまのスタイルが違う、かといって各宗派の仏さまを並べると15体、スペースが足りないかも。

足りない以前に、すごく異様になってしまうのではないか。そもそも、自分の宗派の仏さまを見つけるのも大変だろう。

それでも、お仏壇があれば、なんだか落ち着くかもしれない。子どもや大切な人の無事の帰国を願い、仏さまを見ながら待つ人もいるかもいない。

だが、現実的には、各儀式で使用するモノや本の場所に、仏教の各宗派の経本があるだけでも良いのかも、そうすると仏教徒も入室しやすくなるかもしれない。などと物思いにふけった。

“Prayer room”は、どんな宗教の人にも間口が開かれており、ある程度の宗教の儀式に必要なモノが揃っている。

他宗教と仏教が出会う場所が日本にもあり、しかも充実していることを知って、みなさんにも知っていただきたいと思った。
イオンや百貨店などの商業スペースにも、現在このような祈りの部屋が導入され始めたようだ。

このようなことをきっかけに複数の宗教を少しだが知ることで仏教はどういうものかが、ちょっとだけでも見えるような気がする。

今後のコラムでも、このように仏教についてフォーカスできたらと思う。