お盆と郷土料理

いよいよやってきました・・・

こんにちは。

浄土真宗本願寺派僧侶でフリーアナウンサーの海野紀恵です。

関東甲信地方が梅雨明けして約1週間。

長野県は「朝から暑く・日中は真夏日や猛暑日・夜には雨」というお天気が続いていて、本格的な夏の訪れを感じる毎日です。

本格的な夏の訪れといえば、もうすぐお盆ですね!

お坊さん的に「いよいよやってきた!」のは、夏休みでも、ワクワクな夏のイベントでもなく、「お盆」なのです。

お坊さんはお盆期間に檀家さんのお家をまわって読経したり、法要をしたり・・・。

1年で最も気合を入れなくてはならない時期かもしれません。

(そんななか、私は去年お盆に新型コロナウイルスに感染してしまい、役立たずでしたが・・・。今年こそ頑張ります!)

そもそも「お盆」って?

お盆にどのような意味があるのか、どのようなことをする期間なのかはすでに定着しているように思います。

この「お寺のじかん」にも詳しく解説している記事がありますので、ぜひご覧ください。

(2018年8月13日掲載の記事です)

ざっくりお伝えすると、「お盆には亡くなったご先祖様がお家に帰ってくる。そのご先祖様と時間を共にし、供養する。」という意味があります。(地域や宗旨によって違いもあります。)

そのご先祖様をお迎えするために精霊棚をつくってお供えを整えるというお家も多いかと思います。

(ちなみに浄土真宗はこのようなお盆の準備を全くせず、お盆の捉え方も少し異なる少数派タイプです。)

その「お供え」をよーく見ると・・・地域によって違いがあってとても興味深いのです!

 

信州はお盆に「天ぷら」!

先日、長野県内のスーパーに立ち寄ると「お盆コーナー」が設置されていました。

並んでいるのは、小麦粉と油。

そう!長野県ではお盆に「天ぷら」をお供えするのです。

天ぷらの具材は、長野県内でも地域によって様々で「おまんじゅうの天ぷら」をお供えするところもあります。

「おまんじゅうの天ぷら」は主に松本市などの中信地域や、伊那市などの南信地域でお供えされているようで、北信地域出身の私は馴染みがなく、味の想像が付かなかったのですが、いただいてみるととっても美味しいのです!

油と小麦粉の力で、おまんじゅうにコクがプラスされていて、クセになってしまう味です。

海野家は、なす・南瓜・ピーマン・大葉・ちくわ・魚肉ソーセージが定番。

「ちくわ」「魚肉ソーセージ」というあたり、海なし県の特徴が出ていますよね!

長野県で天ぷらがお供えされるようになった理由の1つは「ご先祖様を特別なお料理でもてなしたい」という思いから、という説があります。

昔は油がとても貴重なものでした。

その油をたくさん使う天ぷらは、当時の人々にとっては、非日常のおもてなしのお料理だったのだと想像できます。

長野県の天ぷらの他にも、山梨県では「安倍川もち」をお供えする習慣があったり、お団子やおはぎをお供えする地域もあるようです。

甘い和菓子をお供えするのも、お砂糖がとても貴重な時代に、特別な味でご先祖様をおもてなししたいという思いがあるように感じますよね。

お盆をご縁に

今年は久しぶりに制限のない夏休みが迎えられそうです。

数年ぶりに親戚が集合するというお家も多いのではないでしょうか?

「供養」と聞くと「精霊棚はこうしなくてはいけない」「お供えは〇〇でなければならない」と肩に力が入り、少し身構えてしまうかもしれません。

ご宗旨や地域のルールを守ることはとても大切なことだと思います。

でも、そこだけにとらわれず、お盆期間には「今の私のいのちはどうつながってきているのか」ということを少しだけ想像してみてください。

これは忙しい毎日のなかでなかなかイメージすることのない問いだと思います。

でも、この「いのちのつながり」を考えることが供養や仏法に触れる一歩になるかもしれません。

ぜひ、ちょっと特別な「お盆の味」を楽しみながら、考えてみてください。

私は、暑さに負けず、お経と天ぷらをあげようと思います!!(ドヤ顔)

それでは、素敵な夏休みを・・・。