第9回 寺嫁日記 絵師のアトリエへ
こんにちは!名古屋のお寺で暮らす人、ひろかです。
ずいぶんお暇いただきましたがみなさんは健やかに過ごされていますでしょうか。
世界中の誰もが不安を抱えていた2020年、 SOCIAL TEMPLEさんの声かけで始まったツナガリイムでは、奉納くださった方々、賛同寺院の皆さま、絵師の映水先生、など多くのご縁をいただけたことがとてもありがたかったなと、今更ながらに感謝しています。
このご縁から、映水先生の写仏会を名古屋で体験いただく機会を、私達がお預かりしているお寺で設けさせていただいてまいりました。
写仏とは、仏さまを写す行いなのですが、ただ写すというわけではありません。「心を整え、呼吸を意識して私と筆と墨が一体となって線を描くということだったのですね」と取材をされた新聞記者さんが呟かれていましたがその通りで、個人的には仏さまと繋がる行いというイメージが近いように感じています。
ところで今回!大胆ながらも繊細で美しい作品を生み出される映水先生のアトリエへ!念願かなってお邪魔してきました!!(なんてこと!!!)ここからはその記録と感想をお伝えさせていただきますので、よかったらお付き合いください。
【はじめまして山梨】
甲府駅から車で1時間ほどの、古くから信仰を集める霊山 七面山の麓にある日本でいちばん小さな町 早川町に映水先生のアトリエがあります。
知っています、そう、私は何度も映水先生の紹介文でお見かけするのでよく知っています。しかし頭で知っているのと体感するのとでは雲泥の差、百聞は一見にしかず まさしくその通りでした。
アトリエの扉を開けて土間を抜ければSNSのライブ配信(映水先生はTIC TOKで作品の制作を不定期でライブ配信されています)で何度も見た眺めが広がっています。
たくさんの書籍と道具たち、それらは混沌としているようで映水先生にとっては整然と持ち場にあります。
そしてそれらをそっと支えている小さくて可愛らしい特別な仏像たち、窓からパノラマに広がる大自然たち全てが映水先生の一部なんだなぁと思うと、しばし言葉と思考を忘れ体感に浸っていました。
【部屋に収まらないほど大きな作品】
そのアトリエでは幅8mにもなる天井画「白龍神桜波図」がまさに制作中でした。
大きな作品なのでパネルを何枚かに分けて制作されていますが、それらをアトリエ内に一度に並べることができず、全体のバランスを保つのが一苦労だとおっしゃるのも頷けます。
完成後にお寺の天井に展示されることが決まっているそうです。
土を使った技法は作品に重量をもたらします、作品が大きくなると使用する土の量が増え、それを支えるためにパネルの補強も必要になり…こうして倍々と重量は増してゆくそうです。
重量のある作品を、天井へ安全に設置する方法の模索や、100年以上保存させるための工夫、専門家の意見を取り入れながら日々模索されているそうです。
他にも制作の経緯や、苦心されていることなど、たくさん話しを聞かせていただきましたが、私が最も印象深かったのは筆です。
筆は動物の体毛を集めて作られています、例えば私たちが屋外で砂嵐に襲われた後の頭髪はギシギシと傷んでしまいますよね、土を使った画材を使う場合に筆にとても負担がかかるはずなのですが、アトリエの筆たちはどれもふさふさとしています。
大切な道具だからと、とても丁寧に洗浄をされるからなのだそうです。
禅宗でも道具を大切に扱うよう厳しく教えられおり、食事の器など細かな作法が定められていることと通じるように感じられました。
【次の展覧会へ】
そろそろ失礼しようかと表へ出るとタイミングよく配送車が停まり、9月28日から始まる増上寺(東京都港区芝公園)の展覧会のお知らせが届きました。
早速にと開封してくださり、私もいくつかいただいて、あの方にお渡ししよう、あちらの方はどうかな、いろんなことを想像しながら戻りました。
この日制作中だった「白龍神桜波図」も制作途中のまま展示されることが決まっているそうです。
天井に収まってしまえば、この繊細で穏やかな技法を近くで見つめることは叶いません、天に昇る前の龍を間近でご覧になれる貴重な機会になりますので、多くの方に楽しんでいただけたらと願っています。
合掌
※今回の旅は、SOCIAL TEMPLEの横山瑞法さんと、てらつな の玉置真依さんにサポートいただき実現しました!お二人との旅の報告はまた次回お伝えできれば幸いです。