【勉強会レポート】「キフクリエイター」山田さんと学ぶ「寺院における寄進・布施」
令和5年9月17日、15時より、山梨県甲府市にある甲斐善光寺を会場に、「キフクリエイター 山田さんと学ぶ寺院における寄進・布施」と題した寺院・僧侶向けの勉強会を開催いたしました。
今回の講義は、対面講義とオンライン配信によるハイブリッド形式で行われました。
最近巷によく聞くようになった「クラウドファンディング」。
東大寺や法隆寺といった有名な寺院においても活用されるようになり、認知度が高まっているといえるでしょう。「布施」「寄進」について、見直す時代が来ているようにも感じます。
では、そもそも「布施」「寄進」とは何か?ただお金を集めるだけでよいのか?根本に立って、寺院や僧侶としてできることは何か?
そのような課題意識から、今回の勉強会を開催いたしました。
その開催の様子をお届けいたします。
日本の「キフ」の歴史
前半では、山田さんより、日本における「寄付集め」の歴史をご紹介いただきました。
タイトルは「ファンドレイジングスーパースター列伝」。
※用語解説:「ファンドレイジング(英:Fandraising)」とは、非営利組織における、財源を集め、事業推進につなげることを差します。なお、そのような仕事に従事する人を「ファンドレイザー(英:Fandraiser)」と呼びます。
タイトルの通り、はるか昔からいた「ファンドレイジング」を実践し、社会貢献を実現してきた「スーパースター」を紹介する形で進行しました。
仏教界における社会事業家として有名な行基和尚のことも紹介されました。
行基和尚は、布教と共に貧しい人々を助けるため治水工事や橋を架けるなどの社会事業に従事。のち聖武天皇より東大寺の勧進に任ぜられ、見事に勧進を成し遂げた僧侶です。
昔から、仏教や寺院への寄進は「来世へのリターン」の為にした時代だったこともあるのでしょう。実際、江戸時代まで時代が進むと、いわゆる「徳を積む」という概念が生まれてきます。
一方で、徳を積む活動は、「表立ってやらない=陰徳の精神」をもってやろう、という文化も芽生えました。
山田さんは、これが、寄付や社会貢献活動を、現代において表立ってやろうという文化が育たなかった日本の環境の原因ではないか、と分析されております。
最近は、芸能人やアスリートの寄付やボランティアなど、チャリティを見かけるようになりましたが、まだまだ一般的ではないように感じます。特に、お寺への布施、寄進に対しては関心が低くなる一方です。
これからの布施や寄進を考えるときに、先人の事を学ぶ大切さを感じるお話でした。
※ファンドレイジングスーパースター列伝は、こちらのサイトにも掲載されております。様々なエピソードが掲載されておりますので、あわせてご覧ください!
寄付を、自分ごとにする
後半は、4名ほどのグループに分かれて、ワークを実施しました。
その名も「キフカッション」。
参加者間で、お互いの「寄付経験」を共有しあうことを通して、寄付を通した体験や学びを探します。今回のテーマは「寺院における布施・寄進」ですが、まずは「自らが寄付者となること」が、他者から布施や寄進を受ける立場となるときに、寄付者の気持ちになる事ができるかどうか、という点が重要になる、と山田さんが今回用意したワークです。
筆者は、オンライン参加のみなさまのグループのキフカッションに参加しました。
問いは2つ。
1つ目は、「一番最初に寄付したのは、どちらでしたか?」
こちらには、多くの方が「赤い羽根共同募金」と回答されました。たしかに小学校で募金を私もした記憶があります。
2つ目は、「最近、どちらに寄付しましたか?」
こちらは、多様性に富んだ回答が。
「東大寺さんの寄進」
「シャンティボランティア協会(SVA、国際協力団体)さんに古本寄付」
「お寺おやつクラブの月額寄付」
などなど。
それぞれ、多様な寄付体験が集まったのが印象的でしたが、さらに一歩踏み込んで「寄付してみてどうでしたか?」という話にも発展しました。
「生活の中で使用するものに対して、社会性を持たせることも必要だと思う」
「寄付する、という利他をすることで人生の満足度が高まる」
そのような話の中で、やはりお寺の布施・寄進においても、「寄付体験が存在するか」という事が必要ではないか?という話も出てきました。
今回の勉強会を通じて、お寺における、これからの布施や寄進のことを考えるきっかけになった、という声をいただきました。
寄付の文化が現代において少しずつ育ちつつある中、寺院においても改めて布施・寄進をどのようにしていくのか、少しでもヒントを見つけ、実践していくことが必要になっていくのではないでしょうか。
講師プロフィール
山田泰久氏 公益財団法人日本非営利組織評価センター(JCNE) 業務執行理事
群馬県高崎市出身、慶應義塾大学文学部卒(フランス文学専攻)。1996年日本財団に入会。2009年から公益コミュニティサイト「CANPAN」の担当になり、NPO×情報発信、助成金、IT活用、寄付をテーマに様々なNPO支援の活動に取り組む。 2016年4月、(一財)非営利組織評価センター(JCNE、2022年11月より公益財団法人)の設立とともに、業務執行理事に就任し、非営利組織の組織評価・認証制度の普及に取り組んでいる。
レポート作成者:嶋田尚教