ご利益寺を巡ろう!静寂の中で富士山を望む山寺、永昌院の歴史と魅力をご住職に聞きました

ご利益寺を巡ろう!静寂の中で富士山を望む山寺、永昌院の歴史と魅力をご住職に聞きました

こんにちは。
ご利益寺巡り担当のライター武田です。
この企画では、カメラとペンを相棒に、お寺のご住職に取材をし、お寺の魅力を発信します。
普段はなかなか知る機会もないお坊さんの生の意見と、仏教ビギナーの私なりに感じたことをお届けしていきます。

第四回、ご利益寺を巡ろう!子授け祈願・安産祈願で有名な定林寺の歴史と魅力をご住職に聞きました
こちらも是非ご覧くださいませ。

それでは第五回目、今回は山梨県山梨市 曹洞宗の龍石山 永昌院(りゅうせきざん えいしょういん)をご紹介します。


永昌院の歴史

寺記によると、この寺の前身は真言宗でした。
約500年前の文明年間(1469~87)武田信正の孫、信虎は13歳で家督を継ぎ、亡くなった信昌の冥福を祈り、お墓を守るため、曹洞宗 龍石山永昌院が開創されました。
開基(お寺の第一世)は武田信昌(武田信玄の曾祖父)が、 開山(初代住職)は信昌の従兄弟にあたる一華文英(いっけぶんえい)です。
永昌院の名は、武田信昌の法名「永昌院殿」からつけられたものだそうです。

初代住職の一華文英は武田信昌の従兄弟であり、後柏原天皇より”神嶽通龍禅師(しんごくつうりゅうぜんし)”の禅師号を賜った名僧でもあります。

山号 龍石山の由来

永昌院は、山をずっと登っていき甲府盆地を見渡すことのできる立地にあります。
永昌院が建っている山全体は大きな一枚岩で、この一枚岩は永昌院より500m上からはじまり、下は山梨市の万力公園付近まで続いています(上の写真は、その一枚岩の一部です)。
この山容を遠くから眺めると、身体をうねらせる龍に見えることから龍石山と名づけられました。

また一説には、永昌院を開山した一華文英の背中にはうろこ状にみえるものがあり、”龍の生まれ変わり”と言われたことにちなむともいいます。


永昌院ご住職、堀内 正樹(ほりうち しょうじゅ)さんに聞いてみました

――どんな参拝客が来られますか

「檀家さんや、甲斐百八霊場巡りの方、ポケモンGOのバトルをしに来る子供たち、カメラマンの方もよくいらっしゃいます。
特に、檀家さんはよく来てくれています。
最近は女性も車の運転をされる方が増え、よく来てくれるようになり、とてもありがたいですね」

永昌院は関東富士見百景に指定されており、カメラマンさんが富士山を撮影しに来ることが多いそうです。
堀内住職いわく、富士山の綺麗な写真を撮る時期のオススメは、4月の桃と桜が同時に咲き誇る時だといいます(レアだそうです)。

――どんなご利益がありますか

「曹洞宗は禅宗(坐禅の修行をし、自らの心と向き合い生き方を悟ろうとする仏教の一派)ですので、「この佛様にお祈りすると、このご利益がある」といったものはありません。
しかし、永昌院には”場所の力”があります。
山梨県の甲府盆地を見渡せるこの地に来ることで、普段生活している地を俯瞰することができます。
そして、日本を象徴する富士山を静粛の中で望み、時の為政者たちも自らの心と向き合い、生き方を決断してきました。
戦場を俯瞰し、戦法を練ることもあったようです。
禅とは、ご利益ではなく”自らの心を見つめ、探し、気づくことを目指すもの”です。
永昌院の静けさは、禅を実践する地として最適な”場所の力”を持っているのです」

今風にいえば、パワースポットでしょうか。
永昌院のお庭から盆地を眺めているだけで、パーッと晴れやかな気持ちになるのは正解でしょう。
しかし、堀内住職のお話しを聞くと単なるパワースポットとは感じるものが違ってきますよね。

永昌院に来た為政者たちが自らの生き方を決意していったように、永昌院の地は私たちにも真の生き方を探す力を与えてくれるのではないでしょうか。

――住職として苦労する点はありますか

「苦労はひとつもないですね。
永昌院の住職であることは、私にとって”使命であり喜び”です。
苦労だと思えばすべてが苦労だったかもしれません。
時代が変わって収入が減り、お寺としての課題はありますが、永昌院が辿ってきた歴史を鑑みれば、今はずっと恵まれているのです」

永昌院は、弟子から祖師(初代住職の一華文英)への尊敬の思いが強く、祖師の伝えた言葉は今までずっと大事にされてきたそうです。

歴代住職はみな、祖師への尊敬の思いを守ることが喜びだったのではないかと堀内住職は語ります。
だからこそ、約500年の時を経て、堀内住職の代にも尊敬の思いが守られ、受け継がれているのかもしれません。
苦労を苦労だと思わない堀内住職の美しい心持ちからは、私たちも学べることがあると感じました。

――好きな仏教にまつわる言葉を教えてください

“古人いわく、「霧の中を行けば 覚えざるに衣湿る」と。
よき人に近づけば 覚えざるによき人になるなり”

この言葉は、曹洞宗開祖・道元の語録集『正法眼蔵随聞記』(しょうほうげんぞうずいもんき)の一節です。
「昔の人が、”霧の中を歩いて行けば、知らないうちに自分の衣が湿ってくる” と言っている。
人格の優れたよき人と親しんでいると、いつの間にか自分も立派なよき人になる」
という意味です。
よき友人を選べば よき人となるけれど、悪い仲間と一緒にいると悪い方向に流れていく。
人生で、どのような師を選ぶのか。どのような人のそばで時間を過ごすのか。どのような本を読むのか。
その自らの選択が、知らぬ間に自らの人格の一端を形成していきます。

私たちに身近な認識でいえば、”子どもは親の後ろ姿を見て育つ”といいますよね。
何を教えようとしなくても、よくも悪くも親の言動に影響を受けて子どもは成長します。
そして、堀内住職はわかりやすく “子育て” に例えてくれました。

「子どもに口うるさく注意するのではなく、親自らが正しい姿や、よい姿を子どもに見せることが重要です」
「例えば、子どもが幼い頃から、家族でお墓参りにいき祖父母や親が手を合わせる姿を見せます。
その時、”手を合わせなさい!”と子どもに注意する必要はなく、走り回って遊んでいてもいいのです。
子どもが中学生くらいになると、自分なりに考える頭ができてきて、親の言うことを聞かない時期がきます。
しかし、幼い頃に、祖父母や親がお墓参りで手を合わせる姿を見ていた子は、30代40代になると親と同じようにしっかりと手を合わせるものです」

“霧の中をいけば覚えざるに衣湿る”ように、身を置く環境というのが大きな影響力を持っているのですね。

お葬式など法事の際に「子どもがはしゃぐから…」などの理由から、子どもをお堂に連れていくのを遠慮する親御さんがいるそうです。
しかし、堀内住職は
“お寺や、法事に子どもが来てくれるのは大歓迎です”
“子どもが来てくれるのは大すきです”
とおっしゃっていました。
堀内住職のお話からは思いやりの心や、やさしさ、和やかな人柄を感じますよね。
親御さんの立場で考えてみれば、お坊さんが子どもたちに寛容な心持ちでいてくださっていることは安心感がありますよね。
檀家さんがお寺によく来てくれるのも、堀内住職のやさしい人柄があってのことなのかもしれません。

 

――どんなお寺にしていきたいですか

「檀信徒さんや地域のみなさんと、お寺との絆を大事にしていきたいです。
永昌院が歴史を歩むなかで、お寺が守られてきたのは、檀信徒さんや地域のみなさんが”お寺をこの地に残し守っていく”という強い思いを持ってくれていたからだと思っています。
住職として、その気持ちに応えていきたいです。
そして、できるだけ継続して檀家さんが増えてくれたら嬉しいですね」

永昌院は、明治42年にお寺のほぼすべてが燃えるほどの火災があったそうです。
きっかけは、子どもが石を挟んだねずみ花火を投げて遊んでいたところ、お寺のかやぶき屋根に火が付いたものでした。
永昌院が燃えていることに気が付いた人々が大勢集まり、遠い方だと現甲州市勝沼町(山梨市のとなり)から消防団がかけつけ、当時は車もないので手押しポンプが来たそうです(山道をずっと登ってくるのに大変だったでしょう)。
残念ながら永昌院の建物は銅鐘以外すべて焼失してしまいました。
しかし、大勢の人が集まってくれたことで、お寺の中にあるものは畳から額まで外せるものはすべて外し、100%持って出ることができたそうです。

この写真は、火災の後に新しくお寺を建造している時の記念写真だそうです。
火災時の逸話を聞くと、永昌院を大事にしていたのは歴代ご住職だけでなく、地域の方々も永昌院をとても大事に思い、絆があったことが感じられますよね。

堀内住職は、聡明な方でありながら、やさしくてユーモラスな一面をお持ちのお坊さんです。
私が堀内住職とのツーショットをお願いした際は、堀内住職は「恐縮です」とユーモアを交えてくれます。
ついついクスッと笑えてしまって、一緒にいると肩の力が抜けるようなお坊さんなのです。

やはり、私たちがどのお寺・お坊さんに、自分の大切な人のお墓を頼みたいかというと、素敵だと思えるお坊さんに頼みたいですよね。
そして、私は堀内住職のような、やさしさや居心地のよさを与えられるような素敵なお人柄に憧れてしまうのでした。

――最後に、お寺の好きなスポットを教えてください

【堀内住職】
「お庭の草刈りをしている時などに、昔山門があったこの場所で、おー○お茶を片手に10分ほど休むのです。
歳をとるにつれて、いいなあと思うようになりました。
涼しくていいですよ」

【武田】
「私は、お寺の裏山につづく小道がお気に入りです。
山水がとなりをざあざあと流れ下りていました。
小さい頃に、近所の山を冒険した時のような童心がよみがえります」

 


曹洞宗 永昌院の御朱印

 


永昌院 ご案内

曹洞宗 龍石山永昌院HP

TEL 0553-22-2179

住所 〒405-0036 山梨県山梨市矢坪1088番地