ワインは修道院だけでなくお寺からも生まれていた!後編

ワインは修道院だけでなくお寺からも生まれていた!後編

[ワインの澱出し]

ついに寝かしていたワインを起こす時がやってきた!

いよいよボトリングかと思いきや、澱出し(おりだし)というぶどうのカス的なものを出すという需要な仕事があった..。

ここまで行き着く流れを知りたい方は、下記のリンクから前編をぜひ読んでいただきたい。
「ワインは修道院だけでなくお寺からも生まれていた!前編」

さて、タンクの底に溜まっている澱を入念に出す作業から。
そして、ろ過を行う。


数十枚のろ過紙で漉す。


色と香りに惹きつけられ、写真を整理するとこのショットが大量にあった。。。
早く飲みたい!!!


さすがはお坊さんである、お庭の掃除もさることながら、ワインのたらいもめちゃめちゃ綺麗にするのだ。


澱がべったりとついているのだが、それを念入りに妥協することなく洗う。
さすがである。

[ワインの瓶詰め]

「いよいよ蔵出しです、お越しください!」とご連絡をいただいた。
日本酒みたいだなーと思っていたのだが、合点がいった。

例の一升瓶、きたー!!!


ここも修道院のワインとは違うところ。

一升瓶ワインは量が多すぎて飲めないわー、なんて思っていたが一升瓶をいただいた後に友達と飲んだら一瞬でなくなった。

ここで一升瓶の意味が理解できた。


みなさんとのランチ。

毎回手伝いに参加させていただく度に、この時間も楽しみになる。

寺庭さんがご用意してくださる美味しいお食事を、ワインの話や今後のお寺のお墓事情などのお話しながらいただく。
真言宗では、お寺のお坊さんの妻のことを「寺庭」という。浄土真宗では「坊守」というなど、宗派、地域により異なる。


もちろん、720mlの瓶もある。

このワインを飲んだ夜は、私のように葡萄薬師如来様とちゃぶ台を囲み語らえるかもしれない。


赤のボトリング。
満杯になったら、空っぽの瓶をノズルに刺す作業。


白のボトリング。
簡単そうに見えたが、させていただくとスピードを気にしながらこぼさないようにするので、意外に見た目より難しい。

そして、この作業がアナログラインの最初の仕事であるから責任重大プレッシャーポジションなのである。


ボトルにワインを注ぐ→ キャップ/コルクを閉める→ キャップ/コルクを機械で密封。


キャップを密封。
愛も込めて。


コルクつめ機で押し入れた後、木槌で密封。
これを飲めば、お経が上手になるかもしれない!?


税務署申告書類作成、大事大事。


1つずつボトリングした瓶がこのように軽トラに積み込まれると壮観である。

そしてお寺に運び込まれる。


境内に運び込まれたワインはキャプ部分にビニールが熱処理でかぶせられ、さらに密封される。
普段何気なくナイフで開ける部分だが、こんなに手間がかかっていた。


できあがり!

工場のラインではお目にかかれない工程で、想いが込められたお手製のワインたち。

[ワインと社交界]

地元の方とは半年間のワイン作り体験を経て話が通じるようになった。

「一升瓶のワイン作りに参加させていただいたんですよー!テーブルを囲みワイングラスでいただくのも良いですが、ちゃぶ台でみんなと語らいながらお茶碗でいただくのも美味しいですよね」と。

都会の方とは、「山梨県のお寺で作ったんですよー」と、パーティーに一升瓶のワインを持っていったら、美味しい美味しいと瞬く間に無くなり、ヒロインになれた。

バーやパーティーに行くと、フランスのワインは何々でニューワールドのワインは何々だと飲んでいるワインを自慢気に長々と語り奢ってくれる男子がいるがその人たちに勝ったような気がした。
そんなタイプの人には体験ストーリーや歴史的背景を、どやっ!と語ろうと思う。

[お寺とワインの魅力]

ワインがキリスト教の修道院でだけでなく、仏教のお寺からも生まれていた!
そして、1つ1つの瓶に思いが込められていてとても美味しい。

キリスト教の血とワインの関係ほど仏教とワインは接点が少ないかもしれないが実は知られていないだけで奥が深いのかもしれない。

山梨には世界的に有名な美味しいワインを生産している大きなワイナリーもあるのと同様に葡萄農家さんが集まったりして地元に根付いたワイン作りも行われている。

どちらも美味しく魅力的なのである。

最近お寺の存続が檀家数の減少などにより問われているが、大善寺のようにワイン作りを通じて葡萄薬師如来の文化の継承、ワイン作りで地元の方々と交流されている。
また、お寺のゲストハウスでワインが飲めたり、ワイン販売で世界に向けてのコミュニケーションをされている姿勢に惚れ込んだ。

フランスやイタリアのワイン産地巡り、キリスト教の聖地の巡礼も魅力的だが、日本のワイン産地巡り、お寺の巡礼も同じくらい魅力的である。
ぜひ日本人として知っておきたいところである。

()注釈なしの撮影: ©makouFUJISHITA