第25回お寺豆知識〜修行〜

第25回お寺豆知識〜修行〜

第24回お寺豆知識で「数珠の違い」について記事にさせていただきました。

第25回の今回は「修行」について各宗派ごとまとめてみました!

修行で思い浮かぶものはなんでしょうか?
滝行?坐禅?お経?

いろいろ浮かぶと思いますがその実態とは!!!

①僧侶の資格を取るためには②修行内容③辛かったこと④修行あるあるやおもしろ話

以上4つのテーマで進めていきます。

修行の世界を覗いてみましょう!

浄土宗 渡辺光順さん

①僧侶の資格を取るためには

(1)宗門大学(大正大学、佛教大学)に入学し、仏教学の単位を取得すると同時に、大学の春・夏・冬の長い休みの間に本山(増上寺・知恩院等)にて研修。
順調にいけば3年目の冬、本山(増上寺・知恩院)で「伝宗伝戒(でんしゅうでんかい)」という3週間の加行(けぎょう)を成満(じょうまん•行を成就する事)
(2)養成道場・・・宗門大学に通っていない状態で春、夏に数回3週間の修行に行き、伝宗伝戒を成満する。
(3)通信講座・・・仏教大学の通信過程に入学し、通信にて座学単位を取得。
定期的に3週間程度の修行に行き伝宗伝戒を成満する。
などの方法があります。

どれを選んでも座学(単位)と実践(修行)を経て伝宗伝戒を受ける事が必要になります。
私は①を選択して大正大学に入りましたが、大正大学の中でも仏教専修科という本山に住み込む学生として入学入山を致しました。
専修科は定員10名で本山に住み込みます。

②修行内容
入山すると初日の夜に先輩が剃髪してくれます。
T字の髭剃りで頭を剃るのですが18歳の青年達は頭のニキビに髭剃りがあたり血だらけで風呂から出てきます。

全員の剃髪が終わると翌日の入山式に出席するための作法を一夜漬けで覚えます。
この時点で何となく人が減っていく理由がわかってきます。

直前まで高校生であり卒業旅行などを普通に楽しんでいた若者が、テレビも雑誌も新聞も電話も外出も自動販売機でさえ自由に出来ない世界に飛び込む落差で心が折れる若者が続出します。

さらには入山式を終えると翌朝から朝勤行(あさごんぎょう)が始まります。
朝5時に起床して本堂でお経をあげるのですが、ある程度ちゃんと出来るまでは中に座る事も許されません。

朝勤行の後は堂内を清掃、本山は広いので学生15名で手分けをして行います。

私が居た増上寺は港区にあり目の前は大きな交差点の為、毎朝チリトリ一杯のタバコの吸い殻が落ちてたのが印象に残ってます。

掃除の後は朝食ですが食事の前には食作法(じきさほう)というお経をあげます。
慣れない1年生が間違える度にやり直し最初の1週間は食べる頃には味噌汁が冷たくなっている事が日常でした。

その後平日は大学に通い、土日は朝勤行、半斎(昼のお経)を含め、作務、夕方には夕勤行(ゆうごんぎょう)をお勤めします。

夕飯を食べた後は道場にて声の出し方、座り方、歩き方から各勤行のお経までみっちり教わり、自室(10人部屋)に戻ってから復習と翌日の予習で寝るのは早くても1時頃でした。

気付くと同期も1名辞めて7名に…
毎年2〜3名は辞めているそうです。

③一番辛かったこと
食事。嫌いな食べ物も涙目になりながら全て食べなくてはならない。
※渡辺光順さんは野菜が食べれません。

④修行あるある・おもしろ話
増上寺では伝宗伝戒が12月初旬から27日までですが、成満の頃になると隣のプリンスホテルからクリスマスディナーショー音が聞こえてきます…
いや別にクリスマスがどうって話ではないですが…
わかりますよね…?

浄土真宗本願寺派 釋 秀慧さん

※浄土真宗は修行という位置付けはありません。あくまで資格を取得するための講習です。

①僧侶の資格を取るためには
宗門大学(龍谷大学、武蔵野大学等)へ行く人も、他大学へ行く人も、高卒の人も同じです。
本願寺西山別院にて得度(お坊さんの資格を得る)をし、教師教修(住職になれる資格を得る)という講習へ行きます。

②講習内容
(1)得度
朝5時半起床 掃除 晨朝勤行(じんじょうごんぎょう) 班ごとにMT 座学、昼食、座学、日沈勤行(にちもつごんぎょう)、夕食、自習(試験を受けたり、各自お経の練習など行う)、風呂、就寝勤行、23時消灯。

得度の時は男性は五厘で入所(11日間)し、男性は10日目に剃髪をし、女性は10日目に襟足を剃ります。
女性は黒髪。化粧は不可です。
袈裟と耳に髪の毛がかからないように整髪をします。

10日目の夜は白衣と俗袴をつけ過ごします。
俗袴はお坊さんと一般人の間という意味があり、10日目の剃髪後数時間しか着袴しません。

得度式当日。

午後に西山別院を出て、西本願寺へ行きます。日没後、得度式を行います。
得度式は本堂の電気を全て消して行います。
理由は親鸞上人が出家した時間が夜遅くと言われているためです。

得度式中に、門主より帰敬式(頭頂に剃刀を当ててもらい、僧侶となる)を受けます。

得度式の後食べ方を習い、翌日の朝に西本願寺で精進料理をいただきます。

 

(2)教師教修
10日間行き教師資格(住職になれる)を取得します。
内容は座学(授業)、声明(節や抑揚のついたお経)、法話の練習や布教実演を行います。
食事に制限はありません。

修行について成仏するための方法とするならば、浄土真宗において成仏するのは阿弥陀如来の教えを聞き受けること。

浄土真宗の修行は、衆生が行うものではなく、阿弥陀如来が行ってくださったもの。
なので、浄土真宗の教師教修は、修行という位置付けではない、ということを前提です。

あくまでも、教師(住職を拝命する、葬儀を執行するなどの資格)を取得するための講習です。

さて、教師教修の1日のカリキュラムは、6時前に起床、洗面、清掃。

その後、朝の勤行が90分ほど。終わって、9時前に朝食。
その後はお昼まで仏教や浄土真宗の教えなどの座学。昼食。
午後も座学と勤行作法の練習。18時ごろから夕食。その後、夜の勤行、1時間ほど行います。
その後、個別課題の試験、自主学習。就寝勤行をして、23時には消灯。 上記が1日の流れです。

③辛かったこと

辛いことは正座です。お経練習中はずっと正座で1日4時間程度正座をします。

④修行あるある・おもしろ話

剃髪で血だらけになる方が多くいます。

起床時音楽が流れてブルーな気持ちになります。

お経のテスト時おもちゃのキーボードを持って出音し、和ませてくれます。

曹洞宗 若月和道さん

①僧侶の資格を取るためには

宗門学校(駒澤大学、東北福祉大学等)に入学する人も、他大学に入学する人も、高卒の人も違いはなく、曹洞宗宗門で認定されている専門僧堂(修行道場)へ修行に行かなくてはなりません。
代表は両本山の永平寺(福井県)と總持寺(横浜鶴見区)ですが、全国各地に18の専門僧堂があります。

②修行内容

修行の年数は師匠が決めます。
師匠の許可がない限り専門僧堂での修行は終わりません。
禅の修行は24時間、365日すべてが禅であり、修行です。

坐禅、読経、作務、食事(いただくこと、作ること)、トイレ、お風呂、頭を剃る事、すべてが等しく重要で、生活の全てが禅なのです。

年に2回摂心(せっしん)という修行を行います。
摂心は、8日間1日中坐禅を行います。
※専門僧堂により回数は違う

基本的な1日の流れは以下の通りです。

3時30分起床、洗面

暁天坐禅(きょうてんざぜん・・・朝の坐禅40分)
朝課(ちょうか・・・朝のお勤め)
小食(しょうじき・・・お粥・・・朝の食事)
山内作務(さんないさむ・・・掃除)

午前・・・坐禅、作務や法務、勉強など配役や日によって変わります。

昼・・・日中諷経(にっちゅうふぎん・・・昼の読経)

中食(ちゅうじき・・・昼の食事)

午後・・・坐禅、作務や法務、勉強など配役や日によって変わります。

夕方・・・晩課諷経(ばんかふぎん・・・夕方の読経)

薬石(やくせき・・・夜の食事)

夜、夜坐(やざ・・・夜の坐禅)

21時、開枕(かいちん・・・就寝の時間)
※僧堂によって内容は違います。

③一番辛かったこと

24時間の生活のすべての作法を短期間で学ばなくてはならなく、生活にも慣れずに非常に苦しい時期があります。

坐禅の仕方、食事の作法、お勤め(読経、法要)の作法、歩き方、お風呂の入り方、作務の仕方、衣のたたみ方、お袈裟のたたみ方・付け方の作法、各配役の業務などなど沢山覚えることがあります。
勉強して覚えること、実践して覚えることなど沢山あります。

これは外面的な厳しさですが、本当の厳しさは内面的なことです。

怠けてしまう心、乱れる心を日々の生活に没頭することで整えていく。
そして毎日、毎日同じことを繰り返し、当たり前のように生活三昧になる。ここが禅の修行の大切な所だと思います。

④修行あるある・おもしろ話

食事が精進料理なので、最初は栄養が偏り「かっけ」になる。
僧堂に入った当初は食事も緊張しながら食べることや、量も少ない為お腹がすいてしまう。
いただいた最中を何日かに分けて大切に食べた。
朝が早いので坐禅中に寝てしまうが、寝る人は決まっている。
緊張しすぎて法要の進退作法を間違えてしまう。
寝言でお経を唱える。
寝ながらも先輩に怒られている。

臨済宗 藤岡 宗順さん

①僧侶の資格を取るためには

宗門学校(花園大学、正眼短大等)に入学する人も、他大学に入学する人も、高卒の人も違いはなく、臨済宗で認定されている僧堂(修行道場)へ修行に行かなくてはなりません。
臨済宗では38箇所の僧堂(修行する道場)があります。

②修行内容

修行内容はまずはじめに、庭詰を2日間行います。庭詰とは庫裡玄関入り口にて食事とトイレ以外は動かずひたすら低頭。
その後は且過詰(たんかづめ)を3日間行います。
且過詰は6畳程の部屋で食事とトイレ以外は朝から夜まで坐禅をします。

6日目に入門を許可され禅堂にて修行がスタート。
※庭詰・且過詰は各僧堂により日数が異なる

参禅(公案という禅問答を行う。悟りを開くために老師より問題を与えられ見解を答える)、坐禅、掃除、托鉢(町を歩き廻り、一軒一軒玄関前でお経を唱え、布施をいただく)の」修行。

年に8回各1週間単位で接心(せっしん)という厳しい修行に入る。
接心中はひたすらに坐禅と参禅を行う。
12月1日から8日の接心(臘八大接心)は特に厳しく寝る時も横になってはならない。
坐禅をしたまま2時間程度休むことができる。

③辛かったこと

入門から半年程は家族とも連絡が取れませんでした。
トイレ以外に1人になることができません。

④修行あるある・おもしろ話

1年目は剃髪時、極端に時間がないため急ぐあまり頭皮を切って血だらけになるものや、眉毛を半分剃ってしまう人がいます。

雲水衣(藍染めの木綿)の色落ちで入門したばかりの雲水(修行僧)は身体中が藍染めの色になり、特に顔が青白くなります。
入門初日の庭詰で玄関払いされて本当に帰ってしまう人がいます。

 

日蓮宗 横山 瑞法さん

①僧侶の資格を取るためには
大前提として、師となる僧侶を見つけ師弟関係を築き、得度(出家)をします。
師匠とともに清澄寺(千葉県鴨川市にある日蓮宗大本山で日蓮聖人が出家されたお寺)へ行き、1泊2日で行われる度牒交付式に出席します。度牒とは日蓮宗の僧侶への第一歩を歩み始める誓いを立てる儀式です。
その後は教師になるための「信行道場」へ入行するまでに、学校や僧堂経験によって道のりが変わっていきます。

(1)宗門大学(立正大学、身延山大学)に入学し僧階単位を取得。
(a)僧道林という4泊5日の修行へ行く。読経試験を受け合格する。
その後、35日間身延にある「信行道場」にて修行をし、教師の資格を取得する。

(b)宗門の寮や身延山大学・池上本門寺や堀内妙法寺で修行をしながら大学へ通っている学生は上記の読経試験・僧道林は免除される。

(2)宗門大学ではない場合は、上記(a)にプラス検定試験に合格する必要がある。

②修行内容
※信行道場の修行内容

総本山身延山久遠寺山内にある「信行道場」で35日間の修行を行います。
基本的な1日の流れは以下の通りです。

3時50分・・・起床

4時・・・水行(すいぎょう・・・国家の安泰や自己の罪障消滅を祈り水をかぶる)

5時30分・・・本山朝勤(ほんざんちょうごん・・・久遠寺本堂で行われる朝のお経へ出仕)

御廟所参拝・・・(ごびょうしょさんぱい・・・日蓮聖人墓所にてお経をあげる)

道場朝勤・・・(どうじょうちょうごん・・・信行道場で朝のお経をあげる)

8時・・・朝食(ちょうじき)

朝食後・・掃除

9時・・・日課

12時・・・昼食(ちゅうじき)

13時・・・日課

16時・・・夕勤(ゆうごん・・・夕方のお経)

17時・・・夕食(ゆうじき)

18時・・・日課

20時・・・入浴

21時・・・就寝

日課は外来講師による講習を受けたり、お経の練習、法要の練習などを行います。

そのほかに身延山奥の院や七面山敬慎院への登詣、山梨県・静岡県にある本山への研修参拝などを行います。

③辛かったこと
長時間の正座による足の痛み。酷い人は軽度の褥瘡(じょくそう)になる人もいます。
真夏の期間の修行の場合は、エアコンのない道場で汗だくになりながら毎日を過ごすので体力的な辛さもあります。
そんな中で受ける講習は睡魔との戦いです。

④修行あるある・おもしろ話
度牒交付式は千葉県鴨川市にある清澄寺で行われます。
師匠にディズニーランドへ行こう!や鴨川シーワールドへ行こう!と言われ(騙され)、度牒へ行く人が多数います。

以上各宗派ごとの修行の違いについてまとめてみました!

どうだったでしょうか?
宗派が違えば内容も全く違いますね!

お坊さんは厳しい修行や講習を経験してきましたが、あくまでスタートラインに立ったに過ぎません。

1番大事なことはお坊さんになってからです。
檀信徒や地域社会に寄り添い、仏教を通して苦しみから解放し、よりよく生きるお手伝いをすることが重要だと思います。

お寺のじかんでは全国で素晴らしい活動をしているお寺やお坊さん。SOCIALTEMPLEの活動も多く紹介しています!

これからもいろんな記事をリリースしていきますにで是非ご覧ください!

合掌