【お寺息子でファンドレイザーのつれづれ】「新しい住民自治」と「建物なき寺院」

【お寺息子でファンドレイザーのつれづれ】「新しい住民自治」と「建物なき寺院」

こんにちは。一般社団法人SOCIALTEMPLEのファンドレイザー・事業企画の嶋田尚教です。

以前から、SOCIALTEMPLEの「広報・ファンドレイザー」という役割で関わっている話をしてきましたが、実は日本には「ソーシャルグッドな活動をしている団体の資金調達や事業づくり(=ファンドレイジング)をしている人が全国から集まるカンファレンス」があります。

その名も「ファンドレイジング・日本」、通称「FRJ(Fundraising Japanの略)」

日本のその活動をリードしてきた「日本ファンドレイジング協会」という団体が開催しています(ファンドレイジングに携わる人の教育機関としても機能しており、また「認定ファンドレイザー」という認定資格の認定機関でもあります)。

その「ファンドレイジング・日本」の2024年度開催が先日3月9日にございまして、参加してまいりました。

ファンドレイジング・日本では、毎回、最初の基調講演としてトップランナーからのお話と近年の時流・取り組みについて話されます。

その中で、全国こども食堂支援センターの湯浅誠氏が、「こども食堂(のようなこれまでになかったタイプの地域のコミュニティ)は、新しい形の住民自治」と表現していたのが印象に残っています。

今回は、その言葉から、SOCIALTEMPLEというお寺において大事なことってなんだろう?ということをいちメンバーとして考えて書いてみようと思います。

「新しい住民自治」の形

新しい地域コミュニティは「住民自治」を担っていくのか

近年、「地域(地縁)コミュニティの解体」「住民自治の機能減退」が言われるようになって久しいです。

実際、甲府市内では、高齢化率が40%を超えた地区で「高齢化によって担い手に限界が来て、自治会が解散した(※注)」ということも発生しています。

※注:山梨総合研究所公式HP「活動の現状からみる今後の自治会のあり方とは」より

そのような中で、多世代かつ地縁とは異なる文脈のコミュニティは、「困ったこども(と親)」を助け合う共助の場として、地域住民の何か「困った」という課題を解決するための、住民自治の一つの形ではないか?という指摘だったのです。

「ゆるやかで主体的参加ができるやさしい地域社会を目指して」

SOCIALTEMPLEのビジョン(公式ホームページより)

これは、我々SOCIALTEMPLEの目指す「地域社会の形」として、ホームページにも載っていて、昨年末の5周年を迎えた記念集会でも改めて全員で再認識した、我々が活動した先に目指す社会を思い描いたものです(よく言う、ビジョンというものです)。

SOCIALTEMPLEで行っている「寺GO飯」は「ゆるやかで主体的参加ができるやさしい地域社会を目指して」というビジョンを実現するための、ひとつの形です。

「地域に居場所がない」「こどもを預けてゆったり話せる場所がない」という「課題」を解決する場という意味で、「寺GO飯」も住民自治のひとつと考えます。

そしてそれは、SOCIALTEMPLEのコンセプトである「建物なき寺院」とも一致したものになります。

私たち『SOCIAL TEMPLE』は人が集まって仏道修行をする場所を寺院と見立てています。それは問題意識を共有できる〝人〟が集まり、その課題解決に寄与すること。またそれを自身の修行とする。お坊さんであってもなくても〝人〟が集まり課題解決をするために、 実践しそれを「修行」として〝させていただくこと〟、その人たちが集まることが寺院であり僧伽・サンガであると私たちは考えます。

地域自治が崩壊するかもしれない、という問題意識に対して、少しでも課題解決のために動くこと、それを自らの修行とする人たちが集うのが「(SOCIALTEMPLEという)お寺」。

ビジョンに合わせて言い換えれば、目指すのは「ゆるやか」な結合であり、「主体的参加ができる」という場所または役割が創られている社会、新しい形の住民自治をみんなで作っていく場を提供していくこと、それが、SOCIALTEMPLEの役割だと考えます。

SOCIALTEMPLEというお寺で活かせそうなこと

こども食堂をはじめとした、地域活動と呼ばれるものの多くは「ボランティア」、つまり「(ある程度)自らの意思で、自らの手を出して」携わっている方で支えられています。「寺GO飯」もそうです。

もっと、地域社会の課題をみんなで解決しあう、みんなの課題を持ち合って、みんなのリソースで解決しあう。

誰もが自分ごとにしながら、実際に活動してもいいし、難しければ寄付という形でもいいし、それも難しいなら活動をシェアして「こんなことをしている人たちがいる」ことを広めるだけでもいいです。

これからも、「ゆるやかで主体的参加ができる」場をSOCIALTEMPLEとして作っていくことを続けていきたい(そして僕もその担い手となりたい)です。

そのために、地域社会の課題を探し出し、どういうモデルなら解決できるか?どういう形なら強制でなく「ゆるやかで」、どういう役割が用意されれば「主体的参加ができる」のか?を考え続けていきたいと思います。

そのモデルを作り、持続可能な形を作るために、ファンドレイジング(お金をはじめとした運営を継続するための活動)が重要になってきます。それも僕のお仕事です。

 

人口減少により、地域自治がこれからより難しくなっていきます。

地域自治の新たな担い手として求められるお寺のひとつに、「建物なき寺院」SOCIALTEMPLEが求められるよう、一層活動を進めていかないといけない、と感じました。